IL-6を用いた骨髄腫治療

兵庫医科大学 緒方 篤先生

於日本骨髄腫患者の会セミナー
1999年10月2日
安田生命アカデミア大阪

ご紹介ありがとうございます。

私は,最初から骨髄腫の研究をやっていたわけではなかったのですが,IL-6というものをやり始めまして,それが骨髄腫に重要であるということから骨髄腫の研究に入りました。アメリカに留学した時も骨髄腫ということで留学しました。その時には,インターナショナルミエローマファウンデーション(IMF:国際骨髄腫財団)という非常に関係の深いところから留学の費用の好意と援助をいただきまして,非常にお世話になっておりますので何かの御縁かと思います

まず,今回お話しするのは,抗IL-6抗体を使った治療の可能性ということなのですが,なぜ,そのような治療を発想してそういう治療をやらなければいけないのかというところから話しを進めたいと思います。多発性骨髄腫といいますのは,形質細胞という血液細胞周囲の腫瘍です。もともと全ての血液細胞というのは一つの細胞から分化していて,白血球であるとか赤血球であるとか血小板であるとかリンパ球とかいった,全ての細胞が一つの細胞から分化していきます。
この形質細胞といいますのは、その中のリンパ球系の細胞がさらに分化をしていって骨髄の中から細胞の外に出ていきます。この中にはB細胞・T細胞というのがあり,これはリンパ節で成熟し、成熟したBリンパ球がさらに,骨髄の中に戻ってきて形質細胞になると考えられています。この形質細胞というのは,もともとは骨髄の中にいる細胞ですが,いっぺん外へ出て,またもとへ戻ってくるという非常に変わった動きをしております。この形質細胞が腫瘍化したのが多発性骨髄腫です。すでにもうご存じのことですが、もともとがそういう細胞の腫瘍であるということです。


*スライド*

すでに御存じと思いますが,骨髄腫における症状,病気の本体としては骨髄腫細胞の腫瘍細胞が増加するということで,これが非常に特殊な細胞でM蛋白と呼ばれる一種の免疫グロブリンを作ってくる,これらによっていろんな症状を来たすことがわかっています。
骨髄腫細胞が骨の中で増えることによって起こる症状としてはまず骨髄抑制といいまして,骨の中のスペースをどんどん骨髄腫細胞が置き替わっていき正常な血液細胞が無くなっていきます。そのために,貧血であるとか,血小板減少、白血球減少といった正常血液細胞の減少が起こります。また、特にこれは免疫グロブリンを産生する種類の細胞ですので正常の免疫グロブリンを産生する種類の細胞も減ります。それによって免疫グロブリンが減りますから、当然感染に非常に弱くなります。また,骨の中で骨髄腫細胞が増えるのでこれが直接骨を破壊する。直接と言うのは語弊がありますが、骨髄腫細胞が骨の中で増えるために骨を破壊するということが起こります。これはよく起こる病態ですし、患者さんの日常生活に非常に大きな影響を与えますので大変な問題となります。これはひどくなると骨折しますし痛みが起こります。更に骨が溶けてきますので骨からカルシウムが溶け出して血中のカルシウムが増えるということも起こります。

次に、この骨髄腫細胞が産生したM蛋白による症状というのがいくつか出てきます。こういう症状はM蛋白,つまり,IgG, IgE, IgMといったような蛋白の量に応じて出てくる症状です。これは腎臓障害,高粘稠度症候群といいまして、こういう異常な蛋白が異常に増えることによって血液がネバネバになるということによって起こる症状,これは出血しやすくなったり,眼症状,神経症状などが出ることがあります。またアミロイドーシスといいまして、このM蛋白が身体の方々のいろんな組織に固まりを作って沈着する,溜まっていくことによる症状が起こります。例えば腎臓,心臓,消化管などに溜まっていきまして,その機能をジワジワと弱めていくというような症状がおこります。


*スライド*

これは非常に大ざっぱな多発性骨髄腫の経過を表したものですが,縦軸に腫瘍細胞の量・蛋白の量をとり,横軸に年数をとります。最初発症した時は非常に少量の腫瘍の量であるし蛋白の量です。この非常に少ない段階はMGUSという,一部良性,一部悪性に転化するような状況の,いわゆる前がん状態といわれるような状況です。この状態が非常に長く続きまして,しだいにくすぶり型、無症候型といわれるように蛋白量が増えていきまして症状が出現してくると,いわゆる多発性骨髄腫ということになります。最近は健康診断等が発達して,発症する前にこのような段階で診断がつくということも非常に多いです。昔は症状が出現するまでわからず,例えば骨折が起こるとか貧血が出るとか症状が出てきて初めてわかるというようなことでした。

だんだん蛋白量が増えていきまして,合併症状が非常に重篤化したり,普通骨髄腫は骨髄の中でしか増えないのですが,骨髄の外へどんどん飛び出していくというようなことになると非常に激症化した状況になり,こうなると予後も半年くらいではないかといわれています。一般的に骨髄腫の予後は平均2〜3年ぐらいではないかといわれているのは,症状が出現してからという意味です。実際,骨髄腫といわれましてもこの症状出現以前の方ですと,ここに達するまでにかなりあるので非常に長い経過を辿ることになります。もともとの発症からみると20〜30年といった,昔から実はあったんだ,気づかないだけであったんだということは しばしばあります。


*スライド*

これはすでにいろいろ説明がありましたから簡単にしますが,現在行われている主な基本的な治療法ですが,今一番用いられているのは抗がん剤を用いた化学療法です。MP療法とか,VAD療法とかいろいろありますけれども,こういった抗がん剤を使った治療法,それ以外には補助的治療法として局所的な症状のあるときは放射線療法,もしくは形質細胞腫のような固まりを一部に作っているような場合には放射線療法などを使うこともあります。しかし基本的には骨髄腫は,多発性骨髄腫という名前のとおり全身であります。放射線療法だけで完治するのは非常に難しいと考えられます。補助療法としては多発性骨髄腫に伴ういろいろな症状に対する治療法です。これも骨髄腫そのものを治す治療ではなくて,症状を緩和するということになるので,基本的にこれで骨髄腫の治療が全うできるというものではありません。ここで、用いるビスフォスフォネート製剤という,骨破壊を止めるという系統の薬なのですが,これに関しては骨髄腫の細胞の増殖を抑制するというような報告も一部されておりますので,純粋に補助的療法であるかどうかということもよくわからないのですがこれだけで治療するというのは無理があるかもしれません。


*スライド*

ここで一番よく用いられている治療法は抗がん剤による治療法なのですが,なぜ抗がん剤が効くのか,そしてどうして抗がん剤の治療に限界があるのかということを考えてみたいと思います。もともと,細胞というのは染色体が分裂して遺伝子を複製することによって二つの細胞に分化していくという流れをとっていきます。ここで抗がん剤というのは何かというと,染色体が遺伝子を複製する時に遺伝子の複製の材料そのものではなくて,それに似せたようなものを,ニセの材料のような形である,もしくは遺伝子の複製を,時に働いておかしなことをさせるというようなもので,物質として見つかっております。従って,細胞が増殖する時に間違った遺伝子を複製させるために二つに分かれた細胞が生きていくことができないために死んでしまいます。どういうことかといいますと、抗がん剤は細胞が分裂する時に効きます。分裂しないでここにじっとしているときにはあまり効果はないという抗がん剤が殆どということになります。


*スライド*

そうすると,いま申しましたように、抗がん剤は細胞が分裂するときに効きますので、逆にいうと、分裂する細胞であればすべての細胞に効いてしまうということになります。従って,悪性の細胞だけでなく正常の細胞にも効果が出てきます。ところが悪性腫瘍の細胞と呼ばれる細胞は正常の細胞に比べて非常に増殖のスピードが早いために増殖が盛んです。そのために抗がん剤によってたくさんの細胞が死ぬから,正常の細胞も影響が出てきますが,非常に少ない影響であって悪性の細胞にとっては非常に効果が大きくて,これも一回だけの治療で放っておくと,またしだいに戻ってくるのですが,ここでもう一回加える,もう一回加えることにして、正常な血液細胞は元のレベルに保ちながら,悪性の腫瘍細胞だけを減らすというようなメカニズムによって化学療法は効いている訳です。


*スライド*

 そうすると,抗がん剤はよく効くものと効かないものが出てきます。悪性腫瘍というのは腫瘍のもとにあった細胞の性質を反映しています。つまり,もともと増殖の盛んな細胞から出て来た腫瘍というのは非常に増殖も速い。そういう細胞・腫瘍に関しては非常に抗がん剤が効き易いということになります。どういう細胞が増殖が盛んなのかといいますと,いわゆる未分化型の細胞ということになります。どういうことかといいますと,人間の細胞といいいますのは,もともと精子と卵子が合体して出来た、たった一つの細胞から出来ています。それが大人になると,神経の細胞・血液の細胞・肝臓の細胞と,非常に細分化された機能を持った細胞にだんだん分かれてきます。先程の血液細胞に関しても示しましたが,血液細胞にしても最初たった一つの細胞からスタートしています。ところがこの一つだけの造血幹細胞とよばれるものは,ほとんど何の機能も持たないただ増殖して分化するだけの機能しか持っていません。これが増殖分化をくりかえしていくと,だんだんといろんな機能を持つようになりますが,その分,細胞増殖のスピードは段々遅くなってきて最終的には増殖しなくなってしまいます。従って,より分化した段階で腫瘍化した細胞は,もとから細胞の増殖が盛んでないために効きにくい。一方,未分化の細胞ほど元の細胞の増殖が速いために抗がん剤は効き易いといえます。ただ,細胞の増殖が速いということは進行が速い腫瘍ですから,非常に悪性度が高い悪い細胞と言えます。遅いということは細胞の増殖が遅いから進行がゆっくりしていることになります。


*スライド*

 そうすると,骨髄腫はこういう考えからいくとどういう細胞、どういう種類の悪性腫瘍かといいますと,形質細胞という非常に分化の進んだ細胞である、非常に増殖の遅い細胞であることがわかります。たとえば血液の悪性腫瘍の中で骨髄の中で増殖する,白血病とかリンパ性の白血病,骨髄性の白血病というのがありますが,増殖が非常に速いために予後の悪い腫瘍とされていますが,逆に抗がん剤は非常によく効きます。一方,これがだんだん分化してリンパ節で腫瘍になるリンパ腫のようなものになると,白血病と比べるとやや効き目が悪くなりますが,形質細胞になりますと更に分化しているので更に効きが悪くなります。一般論としてこういうことになります。さらに,血小板とか赤血球といった細胞は核が存在しない細胞なので,これ自身が増殖する能力を失っています。こういう細胞自体で自らがん化することはあり得ないことになります。形質細胞というのは非常に分化した細胞ですので,もともと抗がん剤が効きにくいたちのものであるということになります。


*スライド*

 これはそれを示したものですが,要するに分化型の骨髄腫のような細胞は未分化型の腫瘍に比べて抗がん剤による治療を繰り返しても非常に効きにくいということを表しています。白血病のようなものは非常にやればやるほどよく効きます。ですが,腫瘍の増殖の遅い骨髄腫のようなものは非常に遅いということになります。そしてこれに対して効果をだそうとおもうと,さらに強い抗がん剤による治療が必要になってくるのですが,そうすると正常な細胞に対する副作用もそれだけきつくなってしまうということになるわけです。
 抗がん剤を使って一番よくでる副作用は骨髄抑制です。これは身体のなかで正常でも増殖の盛んなところなので副作用が強く出ます。あとは,消化管・胃・腸の粘膜は常に胃液や腸液にさらされて,常に新しい上皮細胞に置きかわっています。常に新しい上皮細胞をつくっている部位ですから,胃や腸のところにも副作用が強く出て、そのためよくある吐き気・食欲不振といった副作用がでてくるわけです。
 また,頭髪にしてもやはり非常に増殖のさかんな部位でありますから副作用がくると思います。一方,増殖の遅い細胞、例えば脳神経とか,あまり増殖しない細胞においては副作用はあまり出ません。こういうように抗がん剤というのは正常の細胞にも悪性の細胞にも両方に効いてしまいます。骨髄腫のように正常と悪性の効き方の違いが少ない腫瘍に関しては非常に副作用が強く出てしまう,非常に無理して治療をしますので副作用がきつくなってしまうという問題点があるわけです。では,こういう問題点を解決するにはどうしたらいいかということで考えられたのが骨髄腫の細胞だけをやっつけることはできないかという事です。正常の細胞はやっつけないで骨髄腫の細胞だけを選択的にやっつけることができれば副作用の心配なく治療をすることが可能ではないかというふうに考えられます。


*スライド*

 そこで登場してきましたのが,インターロイキン-6(IL-6)といいまして、ご存じと思いますが,これは骨髄腫細胞の増殖因子と考えられています。
 もともとインターロイキン-6という物質は体の中の免疫細胞が産生する蛋白で,B細胞系の細胞に関しては免疫グロブリンの産生とか形質細胞を増殖させるという働きがもともと知られていました。従って,骨髄腫細胞においてもこのIL-6がおかしくなっているのではないかということが考えられていました。実際にこのことが1980年代に証明されています。この増殖のメカニズムには現在大きく分けて,二つあると考えられています。


@広島大学の河野先生(現在は山口大学:事務局注)のところが初めて提唱されたのですが,骨髄腫細胞自身がIL-6という増殖因子を産生し,それが骨髄腫細胞自身を増殖させる。増殖して刺激を受けた細胞自身が,またIL-6を作っていくというように骨髄細胞を増殖させる。自分で自分をどんどん増やしていくような刺激を与えるという非常に魅力的な仮説です。このために腫瘍化するのではないかという考え方です。


Aもう一つ,パラクラインといいまして,骨髄腫細胞自身ではなくてその周りにある細胞がこういう増殖因子を産生しているために骨髄腫細胞が増えるんだ,という考え方です。なぜそういう考え方が出てくるのかというと骨髄腫という細胞は普通は骨髄の中にしかありません。骨髄の外に取り出してくると,例えば,実験しようとして試験管の中に取り出してきてもなかなか増殖しないで勝手に死んでしまいます。ですから骨髄の中は骨髄腫細胞が増殖するのに非常にいい環境なんだろうということが考えられています。そこで骨髄の中にある骨髄腫細胞でない細胞が,増殖因子を産生しそれによって増殖しているのではないかという考え方です。現在,この両方のメカニズムがあると考えられていますが,どちらかというとパラクラインというメカニズムのほうが主流ではないかと考えられています。


*スライド*

これはネズミの実験ですが,最近の遺伝子工学の進歩により、ネズミにIL-6というものを自由に発現させたり欠損させたり出来るようになっています。このIL-6を過剰に発現させたネズミを調べてみると,やはり形質細胞が増加して,ある種の系統のネズミにおいては骨髄腫のような,ちょっと違うのですが,形質細胞腫という状況が出てきます。ネズミではどういうわけか骨髄腫というような,骨髄の中で形質細胞が増えるというようなことはないようなので,どうしても骨髄腫というのはなかなか作れないのですけれども,形質細胞腫という骨髄腫と非常によく似た状態を作ることができたのです。ですからこのIL-6というのが過剰発現することによって骨髄腫が起こるという可能性が非常に強いということがこれによって実証されています。

ところが,それではIL-6を欠損させるとどうなるかということなのですが,これはネズミ自身は正常に発育する。あまり大きな異常は出てこない。見かけ上はほぼ正常であることがわかっています。これをどう考えるかということですが,要するに,IL-6が悪さをして骨髄腫が出来ているんだったら,その治療としてIL-6を抑えてやればいいだろうという発想がでてくると思います。

これがこれからお話しすることなのですが,それでは今度はIL-6という生体内の物質を抑えて何か副作用が出て来るのではないかということが心配です。ところが,IL-6を完全に欠損させたところでも、正常な発育をするし殆ど造血系の異常は起きませんので、IL-6を仮に完全に抑えることにしても,殆ど副作用が発現しないだろうということが予想されます。従ってIL-6を抑えて骨髄腫を治療するというやり方は,非常に副作用の少ない骨髄腫だけをやっつけることのできる治療として期待できるということです。


実際にIL-6を抑える方法にはどういう方法があるかというといろいろ考えられますが,実際にはそのIL-6というのが骨髄腫細胞の表面にあるIL-6レセプター受容体を介して細胞の核の中に「細胞増殖をしなさい」という命令を伝えて細胞が増殖するわけです。そうするとIL-6を抑えてやるという方法もあれば,IL-6のレセプターの部分で抑えてやるという方法もあります。また,もう一つIL-6のレセプターは2種類の分子から成り立っていて,gp130というのがあります。こちらを抑えてもいいだろう。さらに細胞の中で核へのシグナル伝達を阻害してやることによっても効果を得ることが可能なのではないかとも考えられています。

現在のところ,細胞内のシグナル伝達を阻害するというのは実験レベルでもほとんどやられておりません。実験レベルで行われているのが抗IL-6抗体・抗IL-6レセプター抗体・抗gp130抗体という3種類の抗体を用いた治療法が臨床応用可能ではないかと考えられているのですが,ただ,抗gp130抗体というのは非常に,先程のネズミの実験に戻るのですが,gp130という物質を完全に欠損させたネズミを作ってみると,このネズミは全く生れることが出来ないというほどです。非常に強力な副作用が予想されるのでこれは治療としては適切ではないだろうと考えられています。そこで,IL-6抗体、IL-6レセプター抗体を用いて骨髄腫の増殖のシグナルを抑えてやることによる治療が可能なのではないかということで最近いろいろやられております。


*スライド*  Ogt\Ogt13a.jpg Ogt\Ogt13b.jpg Ogt\Ogt13c.jpg

これは一番最初にヒトに対して抗体治療が行われた報告です。これは1991年フランスのバーナードクラインという人が,抗IL-6抗体,ここで何故か2種類の抗体を使っていてその理由はよくわからないのですが,こういうふうに抗体を投与しますと,この○印で示すのがM蛋白の量ですから,抗体を注射するとM蛋白が下がって,ここで止めるとまた上がってきて,もう一度やったけれども効かなかったということになります。
 一方,このs-phase(●印)というのは増殖している骨髄腫の細胞の割合を調べるという方法で,これを用いて増殖している細胞の量を測ったということです。これも抗体によりほとんど増殖した細胞を無くすることができたということになります。ところが,この報告によりますと、しばらくすると効かなくなってくるということが起こっています。何故これが効かなくなったかということですが,ここで用いているマウスの抗IL-6抗体という方法に問題があったということがわかったのです。なぜかといいますと、これはネズミです。ネズミの蛋白質ですからヒトにとっては異物ですのでその異物を排除するための中和抗体が出来てしまったために,このマウスの抗IL-6抗体が効かなくなってしまった。ここで再度投与しても効かなかった,ということがわかったのです。ただ,投与すればやはり効く症例には確実に効くだろうということがわかったということです。

*スライド*

*スライド* Ogt\Ogt15a.jpg 

 これも同じ報告の中からとってきたのですが,抗体を投与しますと血中濃度が上ります。この下の黒い棒が抗体を注射したという事を示しています。抗体をボンボンボンと注射しまして血中濃度がだんだん上がってきて有効血中濃度に達しています。ところがある時点から中和抗体が出現して,中和抗体が増えてくるにしたがって,せっかく注射した抗体が全部どこかへ行ってしまい無くなってしまうということが判っています。

*スライド* Ogt\Ogt16a.jpg Ogt\Ogt16b.jpg 

 そこで今度は,抗IL-6抗体はネズミの抗体であるからいけないのであって,ヒトの抗体に少し遺伝子工学を用いて置き換えてやればどうなるか?です。1998年オランダのグループですが,キメラ抗体というのを作りました。抗体でネズミの抗IL-6抗体のうちIL-6とくっついて,IL-6の働きを抑制する部分以外の部分を,ヒトの抗体に置き換えてやったキメラという抗体を作っています。それで,何例かの症例に投与しているのですが、残念ながらこれを見ると、抗体投与前からM蛋白の量の変化を見ていますが、余り著明な効果が有るという感じはしません。投与量の問題とかいろいろあると思いますが。あまり効果が見られなかったとい症例の報告です。

*スライド*

さらに、ヒトに対する抗原性と書いてありますが,要するに,中和抗体を作らないということが非常に大事だということです。ただ,キメラ型抗体であってもこの部分がネズミの部分であることから,中和抗体を作る可能性が少しは残っています。そこでさらにヒトの部分を増やしたヒト型化抗体という方法を用いまして全くこの抗体を投与しても副作用を起こさないような,そういう抗体を作ってやろうということがなされています。私が大阪大学におりました時に,IL-6レセプター(受容体)に対する抗ヒト型化抗体というのが骨髄腫の治療のために作成されました。それを用いて検討していこうということでなされています。

*スライド*

 この抗IL-6レセプター抗体,ヒト型化した抗体ですが試験管の中での効果です。これは実験でヒトの身体の中ではありませんので参考ですが,抗IL-6抗体を入れますと細胞増殖が抑制されます。抗ヒト型化抗IL-6でも抑制されます。この細胞は当然IL-6に依存して増殖しますから,IL-6ありの状態でやると細胞増殖がさらに増えていますが,これをほぼ完全にヒト型化抗IL-6抗体を抑制することができています。少なくとも試験管の中での効果は完璧だということです。この細胞というのは骨髄腫の患者さんの骨髄から取ってきて分離したヒトの細胞です。

*スライド* Ogt\Ogt19a.jpg Ogt\Ogt19b.jpg

 患者さんからとってきた骨髄腫の細胞をネズミ,スキントマウスに植えるとこういうような大きな固まりを作ることがあります。患者さんの骨髄腫でできました。このネズミの血を採りますと患者さんと同じタイプのM蛋自が産生されてきています。このネズミに抗体を入れますとやはり,腫瘍を植えてから段々増えてきた蛋白濃度が抑制されることになります。おそらく,ネズミを用いた実験においても抗IL-6レセプター抗体は効果を発揮するであろうということが考えられます。


*スライド* Ogt\Ogt20a.jpg Ogt\Ogt20a1.jpg Ogt\Ogt20a2.jpg Ogt\Ogt20b.jpg

そこで,これは1例、2〜3例しか患者さんに投与したことはないのですけれども、実際の患者さんの例です。この患者さんには自己抗体を5・25・50・100mgを4回投与しました。そして血中濃度がしだいに上がってきています。そうするとM蛋白が投与前にじわじわと増加してきていたのが,増加をくい止めることができたかもしれないという結果です。これを投与したために,上がったM蛋白がどんどん下がる,というほどの効果は見られませんでした。これが一番最初のかたです。抗体自身の純度が高くなかったので,あまり大量に抗体を投与できなかったという問題もありました。今後さらに改良の余地があるとは考えられますが,一応細胞の増殖をある程度抑制するという効果はありました。ただ,治療的にこれを完全になくすことができるかというと,やや苦しいかなというのが現状ではと思います。ただ,副作用は全く出ないと言えます。

*スライド* Ogt\Ogt21a.jpg Ogt\Ogt21b.jpg

 その後,抗IL-6レセプター抗体は,現在は骨髄腫ではなくて,慢性関節リウマチの治療ということで治験が進行中で(中外製薬で)これはここ2〜3年のうちに厚生省から認可されて実用化されるだろうと思われます。これも慢性関節リウマチに関してはこれを投与すると劇的に症状が改善し検査所見もすべて改善するという結果が得られています。慢性関節リウマチは多発性骨髄腫ではないのですが,現在抗IL-6レセプター抗体は慢性関節リウマチを対象に認可させようという方向で話が進められています。従って,多発性骨髄腫を含めた慢性関節リウマチ以外の抗IL-6抗体が関係しているだろうとされた疾患に投与することはできません。ですが,この治験が終了して認可された後は,また次の治験ということでこういう治療方法が開始できるのではと考えています。これが抗IL-6レセプター抗体を用いた治療の現状で,骨髄腫に対しては未だ本当にさわりの部分しか行われていません。ただ実験の段階では非常に有効性が高いということが考えられていますので,ある程度の効果が期待できるのではないか。そして一番大事なこととしては全く副作用がない。今のところ問題になる副作用が全く無い。ですから安全に使えるということが言えると思います。現在のところは,大体こういう話しです。

作成(西田、浮田、福西)




ページの先頭に戻る
大阪セミナーの目次に戻る

(c)copyright 2003 IMF Japan all right reserved.