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多発性骨髄腫に対する最新の治療
熊本大学医学部第二内科
畑裕之先生
副題:おもに第7回国際骨髄腫会議(ストックホルム)から
- 骨髄腫の治療概念
- 薬剤耐性について
- 新しい薬剤について
- 大量化学療法について
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於
日本骨髄腫患者の会
1999年10月2日
安田生命アカデミア大阪

熊大の畑と申します。
私は骨髄腫の事ばかりやってきた様なもので、大学院に入ってきた時に血液内科だったのですがまず、なにをテーマにしたかというと骨髄腫ということにたまたまなりまして、さらに骨髄腫をやっている所に留学をして帰ってきて、骨髄腫の患者さんを外来で診察し、入院治療もさせていただいているということでご縁がありましてこういうところでお話しをさせて頂くと言う事になました。
しかし、なかなかこうやって骨髄腫の患者さんにかかわってきて思った事はやはり、なかなか治癒という事が難しい病気であるという事がよく骨身にしみております。でいまやっていることは、何故、抗がん剤が効かないのか、たとえば悪性リンパ腫や急性白血病なんかでは治る方がいらっしゃるのになぜ骨髄腫ではなかなか治らないのかという事に興味を持っております。
薬剤耐性という事に特に興味を持っておりますけれども最新の治療について話してくださいという事でございましたので、たまたま9月の1日から4日間か5日間、ストックホルムで国際骨髄腫会議というのがありまして、これは2年に1回あるんですが、ヨーロッパとアメリカと2年毎にあって今年はヨーロッパのストックホルムでありました。そこに行って参りまして、実際にそこで出ていた内容を少しここで纏めてみようと思います。
そのまえに骨髄腫の治療の概念ですね、皆さん良くご存知の方もいらっしゃると思いますけれども、あまりまだご存知でない方もいらっしゃるかもしれませんのでまず治療の概念についてお話します。それから大量化学療法、薬剤耐性について、さらに新しい薬剤について、という風な流れにしようと思います

スライド1:「急性白血病の化学療法」
骨髄腫ではないんですけども、急性白血病これはごぞんじのことばかもしれません。白血病の場合は寛解導入療法という治療がありましてこちらにそのガン細胞の数(縦軸を指しながら)こちらに時間と言うものを置きますと(横軸を指しながら)、なんどもたくさんの抗がん剤で治療します(寛解導入導入療法を指しながら)。そうそるとガン細胞が減ってまいりましてある程度以下になりますといくら骨髄穿刺液を顕微鏡で見てもガン細胞が見当たらなくなります。それでも地固め療法、まあ駄目押しのようなものですね、やります。そうしてそれでも見えないんだけれども何も悪くなる兆候がなくても3ヶ月に1回ぐらい強化療法というのを行います。これが急性白血病の治療です。
まあこうやって病気が悪くなっている証拠がないのにどんどん治療して、それである白血病は治っていくわけです。しかし骨髄腫の場合はこういった経過はまずたどれなくてこの線以下(下の方の線を指す)になるという事は非常に少なくてある程度になったら横這いになったりしていくわけですね。

スライド2;「大量化学療法の概念」
そういう抗がん剤で治りにくいガンを、治すためにどうすればいいかということなのですが、例えば、あるガンがあったとします。少量の抗がん剤ではガン細胞が減るのにこういうカーブをたどったとします。(少量の線を指す)で少量、中等量、大量という具合に抗がん剤を増やしていけばいくほど速やかにガン細胞は消滅していく、こういう癌であれば、抗がん剤をどんどん増やせば増やすほど治す可能性があるわけです。このようなガンは、肺がんですね、肺の小細胞ガン、乳がん、悪性リンパ腫の一部、白血病の一部、こういったような病気ではこういう現象があります。やればやるほど死んでいく、ただここに骨髄腫があるわけです。(
少量と書いてある線の上を指す)これはやればやるほどという、そういうところまでそういう傾向がなかなかいまのところはっきりとない。ま、やればやるほど死ぬのかもしれませんけども完全に焼き尽くす事が出来ない、というところが問題とされております。

スライド3;「癌化学療法の概念」
それでも治癒に向かって進まなければなりませんから、どういうふうにするかというと、先ほどの白血病と基本はいっしょなんですけどもとにかく抗がん剤をたくさん使ってガン細胞がある程度自壊した時に、ある種の白血病なんかそのままほっておいても治っていくものもある訳ですが、ここでもう骨髄を入れ替えてしまおうと、入れ替える前に、ここでこの辺で(中ほどの上の方を指す)ですね使った抗がん剤の何倍もの抗がん剤を使う、これが大量化学療法ですね。そして、そのままにしておきますと、血小板や白血球が減ってそれだけで致命的な事になりますから、自分または他人の血液の細胞を戻して、骨髄をすっかり入れ替えてしまおうと、そうすれば血小板やなんかが0になって、それが何ヶ月も続くような状態になってもその血のたまごを戻す事によって2週間ぐらいでまたもとどおりになります。そういうのを移植といいます。それから、皆さんご存知の方も多いと思いますけれども、移植というのは移植が目的ではなくて、移植の前にある大量化学療法をサポートする治療ですね、そういった治療が、骨髄腫の場合の移植ということになります。
表1、大量化学療法と移植
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<アーカンソー大学(米国)>
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1000例の解析。予後不良因子(13番染色体の欠損)などがない例に、・200m^m2のメルファラン大量療法を2回行うと、約半数の例でCRが7年以上続いている。
予後不良因子のある例では、地固め療法が必要であろう。
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<Huddinge大学(Sweden)>
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250例の解析。以前は、Allo-BMTはAllo-PBSCTよりも治療関連死が多かったが、最近では、Allo-BMTが安全に行われるようになった。12ケ月時点での治療関連死はAllo-BMTが20%で、Allo-PBSCTが34%であった。Alloの移植はAutoよりも危険な治療ではあるが、再発率が低いことを考えると、Allo-BMTも今後再検討されるべきである。
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<Bologna大学(Italy)>
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57例が移植を受けた。平均年齢は43歳であった。治療関連死は29.6%だが、Allo-BMTは38%、Allo-PBSCTは18%だった。CR率は36.5%であった。5年後の再発率は50%だが、両者に差はなかった。50歳以下ならば、Alloの移植を考慮すべきか。
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で、その大量化学療法なんですけが、まず移植を行う時に、大量の抗がん剤を使いますけれども、そのあとのサポートに自分の血のたまごつまり自家骨髄、自家の幹細胞移植ですね、または、他人のものを使うかという事で大きく分かれます。この下の2つはですね(Huddinge大学、Bologna大学を指す)、他人の骨髄を貰うか、それとも他人のPBSCT、つまり、他人の末梢血幹細胞を貰うかという事を比較してあります。ちょっと話が入り組んできますけども要するにご存知と思いますが、他人の血のたまごを貰った方が予後がいい事は分かりきっているわけです。自分の血のたまごの中には、ガンの素が入っているかもしれませんし、それに他人のものを貰えば、自分の癌細胞を他人の血が攻撃してくれるかもしれないのですね。それが先ほど言われましたGVHDという事ですね、移植拒否反応という事ですけども、少し違ったものを貰った方が良いわけです。ただ貰い方として、例えば兄弟がいてHLAが合った場合に、兄弟の骨髄を貰うのか、その兄弟の末梢血からの幹細胞を貰うのかという事が、一つ今問題になります。で今どちらが安全かということは、今までの風潮といいますか常識的な知識としては、末梢血幹細胞を貰う方が安全だという事になっております。骨髄を貰うとですね骨髄の幹細胞が体に定着して、またそれが増えてくるまでにかなり時間がかかる、末梢血であれば10日から2週間で必ず上がってくるけれども、骨髄を貰うと時間がかかるから、そのあいだに感染症とかそういうものを引き起こし易くなる、という事がハッキリしていてその、移植関連死というものがやはり見過せなかった訳です。で今回の学会ではですねスェーデンの大学では250例について検討してありまして、Allo-BMTというのが他人の骨髄を貰う、Allo-PBSTというのが他人の末梢血を貰う訳ですけども、やはり骨髄を貰うほうが以前、以前はですよ、治療関連死が多かったのですが、最近ではそうでもないという事だそうです。むしろ、Allo-BMTという骨髄から貰うほうが治療関連死が20%で、かなりまあそれでも危険な治療ですね5人に1人の方が移植自体で命を落とす可能性があるという事ですが、末梢血から貰った方もそれ以上であるという事が言われています。
今一番手軽に行えるのは、オートPBSCT、自分の末梢血幹細胞を採っといて自分に戻すという方法ですが、それは一番安全なんですけども再発もある。だから治癒を目指すためには、他人のものを貰うんだけれども、今までは他人の骨髄を貰うより、他人の末梢血を貰った方が安全とされてましたけどれも、骨髄をもらって移植されるという事もそんなに危険ではないという事が言えるようです。もう一つイタリアの大学からの報告では、治療関連死は、やはり他人の骨髄を使った場合が38%、他人の末梢血からの場合は18%でやはり骨髄からの方が危険であるとしています。で、予後的には、再発率は5年後50%であんまり差はなかったということでした。この2つの報告は、ちょっとまだなんというんでしょうかはっきりとした傾向は言えないんではないかと思います。けれども骨髄腫において治るという事を考えた場合は、やはりHLAが一致した、または完全一致した、ほとんど一致している兄弟からの移植という事が治癒への一番の方法であって、その危険性は以前よりは少なくなってきているという事が言えると思います。
もう一つはアーカンソー大学からの報告ですが、自分のものか他人からのものかとか、骨髄か末梢血かとかということではない報告ですが、ここは10年間に1000例ぐらいの人が移植を受けているようですが、バーロギー先生という方が、メルファランの大量療法を2回行っているわけです。
これは、タンデムトランスプラントと呼びますが、メルファランの大量静注とその後の末梢血を戻す処置を、数ヶ月から一年ぐらい程あけて、2回やると、CRが半例で7年以上続いていると報告しています。しかし半分は再発があるわけですけどもそういう報告があります。
ハッキリしているのは骨髄腫の細胞の染色体異常、すなわち13番染色体というのが欠けているとあきらかに予後が悪い、ということですので、彼等の意見としては、こういう染色体異常が無いような人は安心してこういう治療を続けて、もし染色体異常があった人は再発しやすいから移植を行いっぱなしではなくて、移植を行った後に、いろんな抗がん剤を定期的に使って移植後の再発を予防するような、そういう措置が必要でないかというような報告がありました。
表2、「Fred Huchison癌研」
138例のAuto-PBSCと106例のAllo-PBSCTと20例のTandem Transplantを比較した。
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早期死亡 |
4年生存率 |
PFs |
再発 |
| Auto |
20% |
44% |
24% |
46% |
| Allo |
50% |
23% |
16% |
20% |
| Tandem |
5% |
43% |
41% |
29% |
Alloは再発しにくいが、早期死亡が多い。化学療法の量や、症例の注意深い選択が必要。
もうひとつ別の研究所のお話ですが、フレッドハッチンソン研究所というところで100例以上の自分の、末梢血幹細胞移植[Auto-PBSCT]と、他人の末梢血幹細胞移植[Allo-PBSCT]と、自分の幹細胞移植を2回やった例[Auto-Tandem]という3つの例があります。そうしますと早期死亡というのが移植関連死と考えていただいて、移植によってきつい治療をされて数ヶ月以内に致命的になられた方ですが、他人のものを入れられた方は非常に高いですね、自分のものを2回やってもそんなに危なくは無い、危険性が一番高いのはこの[早期死亡50%]、他人の末梢血を貰う人です。で、PFSと書いてありますのがプロブレッション・フリー・サバイバルですか、これは、憎悪せずに生存している人、悪くならなかった人ですが、ここで言いますと、自分のものを使って2回やった人が一番いい[41%]みたいです、ここではですね。しかし生存率は、44、23,43%というように自分のものを入れた人と、2回やった人とでは差は無いみたいです。再発率はですね、ここが一番彼等が強調していたのですけども、自分の末梢血をいれた方は再発する方が半分ぐらい[再発46%]いらっしゃるけども、他人のものを入れた方は20%で再発しにくいというふうに結論づけています。ただこの再発20%だけ見れば真ん中の治療が一番良い治療みたいですけども、早期死亡50%が問題なんです。最初にすぐ命を落とされる可能性がある、残った方で比べてるわけですからこれは一概に飛びついてはいけない、他人のものを入れるにはそれなりの危険性はあるという事ですけども、先ほどお見せした表ではそうでもないということですから、流れとしては、やはり治るための流れとしては、ある程度若い方であれば、兄弟のHLAを調べて、ほとんど一致していれば、その方の幹細胞を採って、まあ、末梢血でもいいし骨髄でもいいですからそれを保存しておく。そして大量の化学療法をしてそれを入れてもらうというのが、治癒への一番の王道だと思います。ただ日本では、骨髄バンクというものが有りますからバンクに登録して、合う人を捜してもらう事は出来ます。けれども、バンクの患者さんの場合は骨髄しか提供できないそうです。末梢血からはまだ提供できない、ということになっております。保険適応がそうなっているみたいですけども、バンクの場合は骨髄からだけです。兄弟の場合はどちらもその場に応じて選択できるというわけです。

スライド4;「抗がん剤への耐性機序」
新しいお薬について話す前に、この耐性化ということを聞かれたことがあると思いますが、これはやはり骨髄腫だけではなくていろんな癌においても起きる事ですが、治らないか治りにくい癌においては耐性化という事はとても大切な事です。どうして薬が効かないかという事を考えますと、たとえば、まあ、1、2、3、・・6個のガン細胞があったとします、そのうちの1個が、抗がん剤が効きにくい細胞だったとします、というのは、ガン細胞というのは100個あれば100個とも同じではなくて、みんな1個、1個少しずつ違うわけです、自分の体の中でもですね、で、あるモノは、たちが悪くて、あるモノは、たちがいい、そこに抗がん剤を入れますと、だんだん抗ガン剤が効いたモノは、無くなって、抗ガン剤が効かない悪かったモノだけが、逆に残っていくような感じになるんですね。
で、治療しているつもりであっても、結局悪いモノを残しているという事にしかなってないということもある。良い治療というのは、全部を殺してしまう治療です。何故こうなるのかよくわかっておりませんけれども、現実問題としてだんだん同じガンでも病気がすすむにつれ、治療が重なるにつれ変わって行くという事がいわれております。これが耐性化という現象です。

スライド5;「抗がん剤の細胞内での動き」
で、もう少し詳しく言いますとですね、抗がん剤というのは点滴したり飲んだりしますけど、これが(大きな楕円を指す)ガン細胞としますけども、ガン細胞に触っただけではガン細胞は死なないんですね、ガン細胞の中に入らないといけません、それも、ま、なんとなく入ったり、じわっとしみ込んだりする薬もあるかもしれませんが、多くの薬はですね、ここに(大きな楕円の円周上の小さな白い縦長の細長いまるを指す)入口だけポンプがあって、ガン細胞の中に招き入れられる、それでなんとなく入る、入ったらそこで案内役がいてあちこち案内してくれる、で、いろんなガン細胞の中の大切なところに毒が運び込まれて、たくさんのよく分からないいろんな機序で最終的にこのガン細胞が死ぬという具合になっています。一番有名な耐性化に関係するものというのはガン細胞が入った後に、これを汲み出してしまう汲み出し屋がガン細胞の中に出てくるということが言われております。これを薬剤の排出ポンプといわれますけれども実際に、アドリアマイシンという薬なんかにはあるポンプが関与しているということが分かっていて、VAD療法が効かなかった、骨髄腫の患者さんでは、薬剤排出ポンプというのがガン細胞にたくさん存在しているという、そういう報告もあるようです。で、効くうちはですねこのポンプがほとんど無かったりするんですね、でも治療を重ねていくと、これがどんどん出てきて、いくら薬を点滴しても副作用は出るけれども、ガンは死なないという状態がでてくる、つまり、そういう抗ガン剤の汲み出しが行われているからですね。ですからこれだけ見ればここを(薬剤排出ポンプを指す)押さえてやれば、効かなかったガンに効くようになるんじゃないかということが考えられます。

スライド6;「抗がん剤耐性化の克服は可能か?」
実際にですね、そういう薬があります。このポンプに対する抗体というものをつくりまして、それを患者さんに点滴してですね、抗がん剤が外に出られないように封じ込めようという、そういうお薬があったり、それからこのお薬がでていく所にはカルシウムが必要である、それをおさえるというような事で、薬を外に出させないようにするというような薬が実際にあります。
表3,「新しい薬剤」
1: PSC833
(Novartis) |
サイクロスポリン関連薬薬剤排泄ポンブを抑える。サイクロスポリンとちがって、免疫抑制効果がなく、
腎臓障害が少ない。骨髄腫にはこれから治験予定 |
2: Thalidomide
(サリドマイド,Celgene社) |
睡眠薬として開発された古い薬。血管新生を抑える。 |
3: Rituxan
(抗CD20抗体、Genentech社) |
骨髄腫の15-20%はCD20陽性例である。これらにはこの抗体が効く可能性がある。 |
4: 抗1L6抗体+メルファラン大量療法
→末梢血幹細胞移植 |
抗体と併用するとCR率は上昇するが、生存率は同じとのこと。 |
| 5: HM1.24抗体 |
徳島大学と中外製薬で開発中。動物実験では、優れた効果を示す。 |
| 6: Arsenic Acid(批素) |
試験管内で、骨髄腫細胞を殺すが、患者への投与の結果はまだ。 |
| 7: レチノイン酸 |
レチノイン酸は急性前骨髄性白血病の治療薬であるが、単剤では無効。 |
| 8: 経ロイダルビシン |
ドキソルビシンの誘導体。単剤では無効。 |
| 9: Doxil (Alza社) |
Liposomeに包んだアドリアマイシン。VAD療法のAの代わりに使用する。有効率25/32 |
先ほどのポンプを押さえる薬というのは、サイクロスポリンというお薬があったり、Ca拮抗剤ベラパミンとかいう薬がいままであったんですけれども、そういうものはですね、サイクロスポリンはとくに免疫抑制剤ですので、薬がガン細胞の外に出ないようにする以外に副作用があるんですね。免疫力が落ちて風邪を引きやすくなったり、また腎臓が悪くなったりしますけども、ノバルティスという製薬会社から出ているPSC−833という薬がありますが、これはそういう免疫抑制効果とかない、しかし排泄ポンプは抑えていくんだそうです。そしてこれは新しい薬剤でこれから治験が始まるという事になっております。こういう薬剤排泄ポンプの治験は、白血病とかいろんなもので行われています。効果はそれなりにあるみたいですけれどもこういうお薬というのはやはり治癒ということにはなかなかまだ結びついていない、ただ効果があることは確認されているんだけれども、じつは一過性であったりそのうち効果がなくなったりするようですね、というのはおそらくポンプも一種類じゃなくて何種類もあるようですね。ですから一つを押さえても駄目ということが大きな原因だろうと思います。しかし、少しずつ新しいお薬が造られています。
サリドマイドですね、これはセルジーン社、これはもうメーリングリストで有名な、皆さんよくご存知のお薬です。これは別にあとでお話しますけれども、サリドマイドというのは日本でもいや世界でもですね、奇形を起こすお薬で、もともと睡眠薬とか、つわりの薬として開発されて、今から50年ぐらい前に、妊婦さんがつわりを治す薬として飲まれていたら赤ちゃんが奇形を起こすという、どういう奇形かというと手や足が異常に短くなるというそういう奇形をですね、で、もう全世界で製造中止になったこういう薬ですが、どうも血管新生というのを抑えるらしいです。で、奇形の原因も血管新生を抑えたからなんでしょうけれども、その事で、最近脚光を浴び出して、製造が再開されています。
まだ骨髄腫に対してですね、アメリカでさえもまだ適応は取れていませんけども製造再開の承認がアメリカではお役所から出て、造っていいということになったわけですね。日本でも使えるようになると思います。その効果についてはまた後で、ちょっと別の項にしてお話します。

スライド7; RITUXAN
それから、リタキサンという薬があります。これは、ジェネンテック社という所が出しています。これは抗CD20抗体といいます、CD20というのはですね(黒板に3つの丸い図を描く)、形質細胞の前の段階であるこの細胞(左の上の丸い細胞の絵を指す)に出ているといわれて、形質細胞になるとほとんど無くなると思われているんですね。ただこのこうくる前の(左の丸から右の丸を指す)段階に、腫瘍細胞のちょっと前の段階なんですけども、これ(下の丸の横に書いたCD20を指す)を少し出してくる、そしてこれ(下の丸をカケで消すしぐさ)を殺す、ここに対する抗体ですが、ま、ミサイル療法ですが、抗体を入れて殺してしまうんですけど、殺してしまえばこう行かないから(下の丸から右上の丸を指す)、これは(右上の丸を指す、すなわち形質細胞)結局出てこないんじゃないか、ここにも書いてますけど患者さんの15〜20%がこういうCD20が検出されるそうです。だから無い人が多いんですね。しかし出ている人に対してはこういう抗体が出ていると、M蛋白が実際下がることがある、という事が報告されておりました。で、なんでこういう抗体が出てきたかというと、こういう細胞(左上の丸を指す)がですね。悪性リンパ腫、B細胞性のリンパ腫というのがほとんどこれ(CD20)を持っているんです。で、リンパ腫も抗ガン剤で治る例もありますけど治らない例も結構あって、そういう例にはこのCD20の抗体を使うと、非常によく効いているということがいま話題になっていて、それなら骨髄腫でもどうかという事で、で、骨髄腫に非常に近い病気として、マクログロブリン血症という、これも聞かれた事があるかもしれません、これはIgMが非常に上がるという、骨髄腫に近いんですけどちょっと違う、これにもこのCD20が良く効くという事がいわれています。これはおそらくまたあの、人間にも投与できる形になって売られているようですから、日本でも使えるようになるだろうと思います。そういう抗体による治療、この後抗体による治療の話がありますけども、これはCD20に対する抗体の治療です。
それから、IL6抗体というのがありますね、骨髄腫の細胞は、このIL6で増えるものがあるんですね。IL6というのは、まあ身体の中にたくさんある、細胞が増えるための栄養みたいなものですが、それがもうどういうものか分かっておりまして、このIL6というのを加えると、骨髄腫細胞が増えだす、全例ではありませんが、それならそれに対する抗体を使って、ま、治療ができるんじゃないかというので実際に使われています。メルファラン大量療法の時に、同時にIL6も、抗体も一緒に入れてやろうと、その後末梢血幹細胞移植をしたという報告がありましたが、効きが良くなる、効きは良くなるけども予後はあまり変わらない。ま、だから一時的に腫瘍細胞をドンと減らすけどもそのあとが、またいっしょになっちゃうという事で、なかなかこういうこの場合はIL6ですけどもこの報告ではなかなか一時的な効果は上がったという事にとどまっています。

スライド8; 新しい抗ガン剤の試み
それからですね、先ほどからお名前が出てますけれども、徳島大学の小阪先生と中外製薬とで造った抗体があります。これは骨髄腫のガン細胞に対する抗体、HM1、24という抗体で、数年前に出来ているんですけども、これは非常に有効性が高そうです。まだ、実際人間には投与されていませんけども、動物実験ですけどもネズミなんかに、ひとの骨髄腫細胞を植える事ができるんですけども、そういう動物実験でこの抗体を点滴しますとガン細胞が消えてしまうんですね。ま、動物実験のレベルですけども、これは非常に良く効くんじゃないかということがいわれている。今後実際に患者さんに投与できるのがいつか分かりませんが、いま研究中のようです。
それから砒素、これはもう皆さんご存知のように砒素というのは毒ですが、あのじつは、骨髄腫だけではなくて、白血病細胞とか血液のガンに、もちろん毒になるほどじゃないですけども、少ない量をかけるとガン細胞が死んでしまう、という事が報告され始めています。えーまだ実際に患者に投与されたわけではありませんけども、実際砒素が治療になりうる、特に白血病で普通の抗がん剤が効かない方対象に、この治療がアメリカで始められつつあるんですね。日本では勿論まだですが。
いろいろ聞き慣れない名前のお薬ばかりですが、レチノイン酸というお薬があります。これは白血病の特殊な、急性前骨髄性白血病という白血病がありますけども、それに有効な、ま、ビタミン剤の一種なんですけども、レチノイン酸で、これは、ま、骨髄腫というのは、なかなか治りが悪いので、その、なんでも他の病気で効いたやつは使ってみようという動きがあるわけです。で、レチノイン酸を使ってみたけどこれはあんまり効きが悪かったということが報告されております。
それから、経口イダルビシン、これはドキソルビシンの誘導体で、主に白血病に使うお薬なんです。これはやはりちょっとドキソルビシンをマイナーチェンジしたようなお薬なんですが、その程度ではなかなか効きが悪いという事ですね。あのこういう薬は、何とかして薬を変えてみたら骨髄腫細胞が死んでくれるんじゃないかと、いろんな製薬会社や研究所が、いろいろ治療方法を考えてるということの表れだろうと思います。それからドキシールというお薬があります。これはVAD療法に使うアドレアマイシンですね、アドレアマイシンをLiposomelという、その、なんていうんですか目に見えないほど小さな脂質です。脂の膜に包んだような、オブラートに包んだようなお薬なんです。そうすると細胞にアドレアマイシンが非常に入りやすくなるという事がいわれまして、実際にVAD療法に、アドレアマイシンの代わりに使ったんです。かなり有効であったということから、例えば先ほど言いましたこれは抗がん剤が細胞に入るところを入りやすくしたようなお薬ですから、普通のアドレアマイシンだと入りにくいけれども、細工すると入るという事があれば、VAD療法が効かなくなった人には、こういうのが今後効くのかもしれませんね。こういうのはまだ外国のお話で、しかも外国でもまだ普通に使っていないんですが、後しばらくするとこういう薬が出てくるかもしれない、という報告がありました。
表4 サリドマイド
| <アーカンソー大学> |
投与方法 |
200mg/day14日間。隔週で200mgづつ増量。 |
投与した
症例 |
進行し、 耐性化した症例 |
| 有効例数 |
完全寛解 |
4/200 |
| 有効 |
19/200 |
| 軽度有効 |
10/200 |
| 総有効率 |
33/200 |
| *有効例では、骨髄内の血管密度が低下する。 |
| 効果の発現 |
100日以内 |
Progression
Free
Survival |
7ケ月 |
15ケ月の
全生存率 |
80% |
| 副作用 |
眠気、便秘、しびれ、深部静脈血栓症、
徐脈など |
| 今後 |
- 初回治療としてメルファラン大量療法に加える。
- 再発例にsalvage療法として多剤と併用する。
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| <MDアンダーソンガン研究所> |
投与方法 |
同じ |
| 投与した症例 |
抵抗性になった患者45例 |
| 結果 |
有効 |
11/45 |
| 効果 |
デカドロンと同程度 |
| <Cedars-Sinai病院> |
投与した症例 |
再発例33名 |
| 結果 |
有効 |
8/33 |
| 50mg/dayでも有効な例があった |
| 副作用 |
腎障害 |
サリドマイドですがご存知の方も多いかもしれませんが、投与方法はですね、この3つの大学、病院全部そうですが、2週間200mg/dayを、これは飲み薬ですけど飲むんですね、夕方ですね、飲むのはですね、というのがこれは眠くなります。睡眠薬ですからね。で、隔週で200mgずつ増やします。200mgでよかった人は400mg,400mgでよかった人は600mgと増やしていく、もちろんあまり増やしすぎると副作用が出ますので、適当なところで止めるわけですけども、50mgでも効く事があるんだそうです。ですから200mgからスタートするのが良いのかどうか分かりません。外国の報告は、たいてい量が多いですね、体格が良いですからですね、だから、日本では100mgぐらいから始めた方が良いのかもしれませんが、まずは少なめでだんだん増やしていく。
アーカンソー大学の場合は、ある程度進行して、普通の治療が効かないような症例をですね、まずそういう方々に使ってみたんだそうです、200例で、もうかなりの患者数に使われてありますけども33例に有効であった、つまり普通の治療が効かない例でも16,5%ぐらいの方が効くんです。これは面白いというか、すごいと思うのは、普通の治療というのは点滴とかいろんな事をやられているわけです。移植されて、点滴の治療をして、で、それが効かないのに、このただ飲むだけの治療で、これだけ効いたというのは、やはりかなり効果がある薬なんだろうと思います。だいたい2、3ヶ月以内に効果が出てくる。実際に骨髄を調べてみますと、骨髄の中の、これ血管新生を抑えると申しましたけども、血管が減っているんだそうです。骨髄の中というのは、非常にあの外と接していないですから、酸素とかがいかないところですね。血管だけが頼りなんですね、ま、そこにあるガン細胞の栄養も血管から取る、酸素も血管から取る、血管を阻害されてしまったら、兵糧攻めになって、骨髄の中は非常に環境が悪くなって、ガン細胞が生きられなくなる、それを狙ったお薬です。えーと進行せずに生存された方の平均が7ヶ月そういうのが得られたし、ま、短いですが、一年ちょっと生存率が80%。副作用としては、眠気、便秘、しびれ、そして深部静脈血栓症、これ脈拍がへるんですね、そういったようなことがありますけども、どれも非常に患者さんに苦痛を与えるというものではない。で、彼等の方針としては、最初から今後使って行ったらどうだろうかということですね、もちろん単剤ではなくて、彼等のやっているメルファラン大量療法とPBSCT2回というのに加えたらどうだろうか、それからどうしても再発されたような方には、これは単剤で使ってますから、他の抗ガン剤とサリドマイドを併用したらどうかとかいうようなことが提言してあります。MDアンダーソン癌研究所でも、同じように投与してありました、45例中11例ですから、ま、似たような感じで有効であったと、これも抵抗性になった方に投与してあります。それからCedars-Sinai病院というのは33分の8、MDアンダーソン癌研究所が45分の11ですからまあ似たような有効率ですね。彼等は腎臓が悪くなった例があると言ってますが、MDアンダーソンではなかったということで討論になっておりました。がしかし、サリドマイドは全世界で使われ始めています。ただ日本ではまだ造って無いですので、輸入しないといけない。このストックホルムの学会では、堀之内さんの経過表が何度もスライドになって会場内に映されて、こんなに効いた人がいるということで、3回ぐらい同じスライドを見ましたけども、非常に話題になっておりました。ただ、輸入しないといけない。ここらは我々も、こういうデータを見ると非常に、ま、輸入はしかし可能です。ま、おそらく厚生省の許可が得られれば、輸入する事は出来ると思います。実際今も、メルファランの大量療法の時にメルファランを輸入してますものね。
表5 その他の骨髄腫に対する治療
<Dendritic Cell+ ワクチン>
移植後のドナ―由来顆粒球輸血など。安全性は高いが有効性が低い?
<維持療法>
1: 移植後、地固め療法
DCEP(デカドロン、エンドキサン、べプシド、カルボプラチン)
2: γインタ―フェロン+抗CD20抗体
γインタ―フエロンは骨髄腫細胞のCD20の発現を増強させる。試験管内デ―タのみ。
<その他>
1:Bisphosphonate
アレデイア、ダイドロネルなど。早期から継続することで、骨病変の進行を遅らせる。
あとはまあ、その他のことですが、免疫療法についてもいろいろまあ今までどおりですねこれは、いろんな報告があります。Dendritic-cellという、免疫を非常に刺激するような細胞を使いまして、骨髄腫細胞を攻撃するように育てて戻そうと、そういったような、いろんな治療がおこなわれています。移植を受けた方にドナー由来の顆粒球を入れて、自分のガン細胞を殺させようという新しい治療法ではありませんがしかしなかなか治癒への道筋、まあ何と言うかこれでは付きにくいというような報告でした。あと、維持療法したほうがいいという、移植後にですね、移植しっぱなしではなくて、デカドロンや、エンドキサン、ペプシド、カルボプラチンといった抗がん剤で、先ほどの白血病の地固め療法、強化療法のような治療をしたほうがいいんじゃないかと、これは特に13番染色体が無いような、再発率が非常に高いとわかっているような人には、特にしたほうがいいんじゃないかというような報告もあります。あと、インターフェロンについてはこれは普通はαを使うんですけども、γインターフェロンもいいんじゃないかというような報告もあり、ま、しかし試験管内のデータなんですけども。先ほどお話がありました、ビスフォスフォネートのお話ありました。
表6 骨髄腫の治療概念
- 大量化学療法+移植(末梢血幹細胞移植、同種、異種骨髄移植)
- 通常の化学療法
- 維持療法
- 再発後のsalvage療法
大量化学療法=治癒を目指す
危険性少→大量化学療法+PBSCT
危険性中→大量化学療法+同種幹細胞移植
危険性大→大量化学療法+同種骨髄移植、最も再発率が低い |
通常の化学療法=治癒を目指せない
MP療法(メルファラン+ブレドニゾ口ン)
MCNU‐VMP療法
VAD療法
Dex大量療法 |
で、ま、最後にですね、結局、最新の治療とはいいましても常識的には、ある程度若い方で、臓器障害がない、大量化学療法に耐えられるような場合は、大量の化学療法その支持療法として、他人の骨髄または末梢血の幹細胞移植をする。ドナーとHLAが合わない場合には、自分のものをというのが、一応の治癒への方向性だろうと、またそれを2回繰り返すということも必要かもしれません。でも、ある程度お年を召しておられる方、しかし何も自覚症状がないような場合には、ステージが若ければ、そんなに治療を急がないでもいいんじゃないか、ある程度症状が出てきたり、ステージが進んだ場合には、通常の化学療法をやろうと。これは結局、今の所みんながうなずくようなコンセンサスだろうと思いますが、サリドマイドとか抗CD20抗体とか、そういったようなものを、特にサリドマイド良く効くようなんですけども、これを、じゃあここの治療戦略のどこに絡めていくかというのは、今からいろいろ検討されるところのようです。しかし今回この1,2年の大きな成果としては、やはり新しいお薬サリドマイドが、効くということ、それが一番大きかったように思います。
以上
作成(広島、浮田、堀之内)
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