(スライド1) 本日は、サリドマイドを中心に骨髄腫の新しい治療についてお話しいたします。 
今までの骨髄腫治療の柱は、抗がん剤を使う化学療法と造血幹細胞移植のふたつでした。最近、このふたつの柱に新しい3本目の柱が出てきました。これは、腫瘍細胞の特性をねらって、攻撃する治療法です。骨髄腫以外の腫瘍でも大きな成果をあげています。例えば、悪性リンパ腫でリタキシマブという抗体を使った治療があります。この抗体はリンパ腫細胞の表面に出ているCD20という抗原を認識して、これを介してリンパ腫細胞を破壊します。また、慢性骨髄性白血病で使われているものは、この白血病細胞の特徴的な遺伝子異常を認識して攻撃します。これらの治療法は分子標的療法と呼ばれ、がん細胞を特異的に攻撃して、正常細胞は攻撃しませんので、副作用も少なく、理想的な治療法といえます。骨髄腫の分野で使われている薬の中では、サリドマイドがそのひとつです。

(スライド2) サリドマイドは1957年に安全な睡眠薬として西ドイツで発売され、日本でも翌年にはイソミンという商品名で発売が開始されました。すると1960年代になり、新生児の四肢が短い奇形が多発するようになりました。この奇形をアザラシ肢症といいます。1961年11月にハンブルグ大学のレンツ博士が、この奇形はサリドマイドが原因であると警告しました。これが有名なレンツ警告です。西ドイツではすぐに回収がはじまりましたが、日本では対応が遅れ西ドイツに次ぐ数のサリドマイド児をうむことになりました。1990年代になりますと、この恐ろしい薬害をおこしたサリドマイドが色々な疾患に有効なことがわかってきました。
アメリカのFDAはハンセン病に伴う結節性紅斑に対する有用性をいち早く認め、その治療薬として認可しました。同時にSTEPSと呼ばれるサリドマイド安全使用のためのシステムを発売会社と一緒に作っています。アメリカでは、「例え恐ろしい副作用があっても必要な薬剤は万全の安全対策を講じて使用を許可する」という姿勢が見えます。日本も大いに見習うべき姿勢と思います。

(スライド4) 現在サリドマイド臨床試験が進められている様々な疾患はこれらです。実際に有効であることが確立している疾患は骨髄腫ぐらいで、他の疾患、特に腫瘍では初期に期待された程の効果は得られていないのが現状のようです。

(スライド5) では、なぜ骨髄腫にサリドマイドが使われるようになったかということをご説明します。
1994年Folkman先生がサリドマイドは血管新生を抑制することと、この作用が四肢奇形を起こす力と相関することを報告しました。余談ですが、ヒトの胎児の四肢は、まず血管がのびてから、それに従って四肢も延びるということで、サリドマイドは血管が出来るのを抑えるため、四肢も伸びなくなるわけです。このためサリドマイド児がうまれたのです。がんの成長には、血管が豊富なことが必須です。がんは血管から栄養と酸素を受け取って成長します。そのため、がんは様々な物質を自分で出して、血管を自分の回りに作る力をもっています。このがんの成長に必要な血管新生を阻害する薬、つまりサリドマイドはがんに有効ではないかとのことで、臨床試験が進められたのです。Folkman先生の報告と同じ年に、Vacca先生が骨髄腫患者さんの骨髄の血管が正常人に比べて非常に多いこと、また血管が多いほど病気が進んでいることを報告しました。このことから、骨髄腫でも血管新生を抑えれば病気を治せるのではないかと考えられ臨床試験が始まったのです。

(スライド6) しかし現在、骨髄腫におけるサリドマイドの作用機序は血管新生抑制だけではないことが分かっています。第一は骨髄腫細胞や骨髄腫細胞の増殖や生存を助けているストローマ細胞を直接攻撃する機序、第二は骨髄腫細胞がストローマ細胞にくっつくところを抑える機序です。骨髄腫細胞は、ストローマ細胞にくっつかないと増殖や生存があやうくなります。第三には骨髄腫細胞の増殖・生存に必要なサイトカインといわれる物質の分泌を抑える機序、第四は先ほどお話しした血管新生抑制作用、最後の第五の機序は、免疫力を高めることです。サリドマイドは、これらの様々な機序が複雑に絡み合って骨髄腫をたたいているようです。

(スライド7) ASHと呼ばれるアメリカ血液学会ではじめて報告されたサリドマイドの治療成績をお示しします。移植後再発や各種の治療に抵抗性となった患者さん89人を対象として、治療効果はM蛋白減少率で見ていますが、20%以上M蛋白が減った患者さんは34%も認められました。この報告で世界中の先生が驚いたわけです。その後、世界各国で臨床試験が行われました。
日本の現状はどうかと言いますと、一つの施設で最も多く治療されているのは慶応大学です。
日本骨髄腫研究会参加施設でも結構使われています。私は日本骨髄腫研究会参加施設の成績をまとめさせて頂き、今年の日本骨髄腫研究会総会で報告させて頂きましたので、その内容についてお話します。アンケートでご返事いただいた症例数は73人でした。平均年齢は63歳で、男女ほぼ半々でした。幹細胞移植後再発例が15例で、他の57例は各種化学療法が効かなくなった症例です。M蛋白が50%以上減少した症例が42.5%、25%以上減少した症例が60.3%で驚くほど良い成績でした。治療法別の成績は、ステロイド併用と各種化学療法を併用した施設がありました。ステロイドを併用した症例が最も良い傾向でした。サリドマイド開始後、病気が進行するまでの期間と生存期間については、中央値がそれぞれ10カ月、21.3カ月であり、サリドマイドが使えなかった昔は、移植後再発例や各種化学療法が効かなくなった症例は、ほとんど数カ月以内で亡くなっておりましたので、サリドマイドで2年近くも生存できることは、夢のようなことです。
治療効果がPR以上の方とそれ以下の方の生存期間については、サリドマイドの効いた方の生存期間が非常に良いことがおわかりいただけると思います。サリドマイドの効果のあった方は、しっかり内服を続けて頂くべきと思います。

(スライド14) 様々な施設のサリドマイド治療成績は、Barlogie先生が最も多くの患者さんに使用した成績を報告しています。これでは、30%の患者さんにPR、つまりM蛋白50%以上の減少を認めています。一番下に群馬大学の成績を書きましたが、同じように33%でして、まとめますと、サリドマイド単独では約3割の患者さんに有効と思われます。

(スライド15) Barlogie先生が治療した患者さんの生存期間はこちらです。
Aliveと書いてある方が生存期間です。なんと治療開始後2年の時期に60%もの方が生存されています。すごい成績ですね。

(スライド16) こちらはサリドマイド内服量別の生存期間です。Barlogie先生は多く内服した患者さんの方が長生きすると報告しています。しかし、私の経験では1日200mgの内服で、かなり副作用が出てきます。眠気、便秘、食欲不振などが必ず出てきて増量出来なくなりました。
それでも12例中7例にPRを得ています。ですから、私はBarlogie先生が言うほど、多く使わなくても良いと思っております。実際、アメリカのDurie先生という偉い先生も少量治療を勧めています。

(スライド18) サリドマイドの副作用をあげました。
これは、サリドマイドを作っているアメリカの製薬会社Celgene社がらい結節性紅斑とHIV感染症患者さんに使った時の副作用をまとめたものです。この中では消化管の副作用、特に便秘が多いようです。また、末梢神経障害、これは手足の先がしびれる症状が多いのですが、これも問題になります。それ以外の、特に血液毒性は少ないと報告されています。

(スライド略)

(スライド19) 先ほどお話しした日本骨髄腫研究会でまとめた副作用ですが、消化器症状、皮疹、末梢神経障害が比較的多くみられています。スライドにはありませんが、私たちの検討では血液毒性が多くみられています。特に白血球減少は約10%の患者さんにあらわれ、減量や投与中止の大きな原因のひとつになっていました。これは、骨髄腫患者さんであるため、元々骨髄の機能が低下していることも一因と思われます。そこで、私はサリドマイドをお使いになる予定の先生には、「必ず血液毒性がでることがあるぞ」とお話ししています。実際、サリドマイドを飲む前に白血球数が2000以上あった方が、投与後3日で700まで下がったことを経験しています。そこで、自分の場合は、特に気が弱いので、投与開始から最低2週間は入院していただき、血算、つまり赤血球数、白血球数、血小板数を週2〜3回調べています。

(スライド20) 今までのまとめをお示ししました。サリドマイドは単独でも再発・難治例に有効であるが、日本人にはなかなか大量投与は難しい。しかし、比較的少量でも効く症例が多いと言えます。そして、その効果を上げるには、他の薬剤との併用療法や少量療法の効果を確かめる必要が出てきます。

(スライド21) ステロイドのデキサメサゾンとの併用療法の効果をまとめたものです。どの報告でも、PRは50%以上得られていて、単独に比べて約10%良い成績です。

(スライド22) 化学療法との併用の成績をまとめてあります。約60%のPRを得ており、単独療法に比べて約20%よい成績でした。

(スライド23) 単独療法の成績をまとめてあります。上のふたつの報告はデキサメサゾンも併用しています。デキサメサゾン併用で約60%、単独で40%前後であり、ほぼ通常量投与の報告と同じと考えられます。

(スライド略)

(スライド24) 私の経験した少量サリドマイド+ステロイド療法が有効であった患者さんの経過についてお話します。サリドマイド100mg/日より開始して200mg/日に増量したのですが、副作用のため100mg/日に減量して治療しましたが、一向に改善せず、激しい骨の痛みを訴え、週400mlの輸血も繰り返していました。この時、ちょうどステロイド併用が有効であるとの論文を見ましたので、プレドニンというステロイドを少量、10mg併用してみました。するとみるみるM蛋白は減り、腎機能も改善し、貧血も良くなり、輸血も必要無くなりました。骨の痛みも無くなって元気に外来通院出来るようになりました。

(スライド25) 以上のまとめです。サリドマイドはデキサメサゾンと併用すると約10%、化学療法と併用すると約20%有効率が上がる。少量でも有効であり、副作用も少ないと言えます。

(スライド26) 現在、日本骨髄腫研究会では「少量サリドマイド+少量デキサメサゾン併用療法による難治性多発性骨髄腫の治療研究」を開始しています。これは日本人における至適投与量の決定、および副作用の調査を大きな目的としています。デキサメサゾン大量を併用した治療成績は、結構報告があり、いい成績なのですが、糖尿病や心不全などの副作用が結構出るのです。そこで、少量デキサメサゾンを併用する臨床試験を始めた訳です。詳しくお話ししますと、サリドマイドは100mg/日で開始して、副作用がなければ200mg/日に増量して合計8週間投与する。デキサメサゾンは4mg/日を4週間投与して、以後減量します。この試験の結果を何とかして早くまとめ公表して、出来れば、日本における早期の認可に役立てたいと思っています。

(スライド27) サリドマイドに関する今後の課題をお示ししました。まず第一に、未治療例に最初に使って有効かとのことですが、現在臨床試験が進んでいるところです。第二には、最近注目されているのですが、自己末梢血幹細胞移植の前治療としての効果です。幹細胞採取前に多くの施設ではVAD療法をして腫瘍細胞を減らします。しかし、時々これが効かなくて、M蛋白が減らない患者さんがいます。この時に、サリドマイドを使って腫瘍を減らしてから、幹細胞を採取する試みがなされています。第三には、維持療法としての効果です。移植や化学療法でプラトーに達した患者さんにサリドマイドを投与して寛解期間の延長を計る考えもあります。最後は、副作用の少ないアナログ、つまり誘導体の開発です。これに関しては後でお話しします。

司会者:ここまでサリドマイドに関して詳しくお話いただきました。質問がある方はどうぞ。


質問1
サリドマイドはどのくらいの期間、内服できるのでしょうか?

村上先生
内服する量にもよりますが、日本人ならば1日100mgから200mgであれば、比較的長く飲めます。また副作用とのかねあいがあります。また、サリドマイドでは病気を完全に治すことは出来ませんので、サリドマイドが効かなくなり、病気がぶり返してきて、止めざるをえなくなります。自分の経験では、2年ほどで病気がぶり返す方が多いと思います。


質問2
私が知っている方で3週間ほどサリドマイドを内服したところ、M蛋白が急に増えて緊急入院されました。この方のように薬が合わないこともあるのでしょうか?

村上先生
先ほどもお話しましたようにサリドマイド単独で使いますと、3割ぐらいの方にしか効きません。7割の方は効かないことになります。私もそういう経験があります。
それでは、サリドマイドが効く方と効かない方を、使う前に見分ける手段があるといいのですが、現在のところ、日本でも欧米でもつかんでいません。しかし、お話しましたように危険な副作用が出るか否かはある程度判別出来ると思います。


質問3
4カ月前からサリドマイドを飲んで、M蛋白は5000から3000に下がったのですが、1カ月前から骨病変が進んで立てなくなりました。M蛋白が下がっても骨病変が進んでいくようなことはありますか?

村上先生
骨髄腫は不思議な病気で、普通のがんと違い、ご存じの通り仕事をしながら細胞が増えます。例えば、白血病などは細胞が増えるだけですが、骨髄腫はM蛋白や骨を破壊する物質など色々なものを作る特徴を持っています。そして、細胞が増えることと、この仕事の能力が平行しないことがあります。つまり、M蛋白が減っているのに細胞が急激に増えていることもあります。仕事をしない細胞が増えることがあるのです。
私の経験でもM蛋白が減っていて、病気はよくなっているなと判断していたところ、突然骨折して、あわてて骨髄を調べたら、骨髄腫細胞がいっぱいであった患者さんを経験しています。形質転換と言って、細胞の性格が変わってしまうのです。
このようなケースかもしれませんし、あるいは実際はサリドマイドが効かなくなってきており、その前兆として骨病変が進行してきたのかもしれません。やはり、骨髄を調べてみることが一番よいと思います。


質問4
サリドマイドを使うタイミングはありますか?
例えば、初期治療に使うとか、化学療法を1回やった後に使うとか、移植後に使うとか、また、それによって治療効果に差はありますか。

村上先生
まず初期治療に、つまり診断時からサリドマイドを使うことが良いかとどうかということですね。まだ臨床試験が進んでいる段階なので論文は少ないのですが、ひとつ報告があります。それによると有効率はMP療法とほぼ同じでした。しかし、MP療法とサリドマイドのどちらが、初期治療に適しているかの結論は出していません。私も初発患者さんに使っても効くと思います。しかし、最初から使うことには疑問をもっています。
ちょっと誤解されている方がいらっしゃると思うのでお話ししますが、サリドマイドでは、骨髄腫は完治できません。ごく希によく効いて、完全寛解になる方もいらっしゃいますが、多くの場合、骨髄腫細胞の増殖をしばらくの期間抑えるだけと私は考えています。ですから、移植の出来ない方はMP療法などの標準的治療をまずしていただき、効かなくなったらサリドマイドを、また移植した方で、再発した場合にサリドマイドを使う。この方法がよいと思っています。つまり、サリドマイドを切り札としてとっておくことです。この方が、患者さんの選択肢を増やすことになると思います。さらに、サリドマイドが効かなくなった場合は、後でお話しする新薬を使うようにするのがベストと思います。


質問5
70代の患者です。今現在プラトーだと言われています。サリドマイドの投与時期ですが、プラトーの時期に始めるのか、再発してから始めるのか、どちらがよいのでしょうか?

村上先生
先ほど、清水先生のご講演でもお話があったように、プラトーに達した場合は日本でも欧米でも化学療法を中断するのが標準的です。MP療法などの化学療法で大体1〜2年治療してプラトーになったら治療を止める先生が多いと思います。では、このプラトーの時期に維持療法としてサリドマイドを使うべきかですが、現在臨床試験は動いていますが、結論は出ていません。先ほどお話ししましたが、サリドマイドは再発した患者さんにもあれだけの効果があること、またサリドマイドで永遠に病気を抑えることができないことから、私としては再発してから使うべきと考えています。


質問6
私は最後の手段を最初に使っているという状況です。サリドマイドで2年間安定した状況が保てたとして、そこからMP療法であったり、移植であったりという形になった時に効果はどうでしょうか。

村上先生
初発の方に使った経験がありませんので、はっきりしたことは言えません。私の経験では、再発難治の方にサリドマイドを使っていて、さらにサリドマイドが効かなくなった場合はかなり大変でした。症例数は少ないのですが、MP療法などで対抗することは難しいと思います。何とか対抗できたのは、ステロイドを大量に使うデキサメサゾン大量療法やVAD療法です。しかし、日本骨髄腫研究会の先生方とお話ししてみると、ステロイドの投与量や投与法を変えると、効く方がいらっしゃるようです。


質問7
今後サリドマイド治療を検討しようと思っているのですが、心臓疾患の手術をして15年になります。現在も血栓を予防する薬と強心薬を飲んでいまして、サリドマイドの副作用には血栓症があると聞いていますが、リスクは他の人より高いでしょうか。また、飲み方に注意が必要でしょうか。
また、トロンボテストをしながら、サリドマイドを使えば問題ないかとも思うのですが。

村上先生:先ほどの副作用で言わなかったのですが、サリドマイドを骨髄腫患者さんに使うようになってから、色々な施設から深部静脈血栓症の報告がありました。つまり、深い所の静脈に血栓が出来て詰まってしまうのです。これを良く調べてみますと、ほとんどが欧米の報告で、サリドマイドを多く使っている患者さんで、かつ化学療法やデキサメサゾン大量を併用している患者さんによく見られています。日本の先生もかなり心配していましたが、ほとんど見られませんでした。これは、サリドマイドや併用しているデキサメサゾンの量が少ないことがその理由ではないかと考えています。また、民族的な差もあるかもしれませんね。ですから、血栓予防薬を飲んでいらっしゃるので、血栓はそんなに心配ないと思いますが、サリドマイドはできれば少量療法でいくべきと考えます。また、トロンボテストのデータをしっかり見て、血液の固まるのを抑えていただければそれほど心配は無いと思います。よく主治医の先生とご相談なさってください。


質問8:先ほど血液毒性のところで白血球が下がるとのことでしたが、それ以外にどういったものがあるのでしょうか。

村上先生:確かに血液の3大成分の赤血球、白血球、血小板のどれでも減りますが、一番強く出てくるのは白血球減少で、ついで血小板減少です。赤血球の方はあまり心配なさらなくてもいいと思います。


質問9:現在、サリドマイド単剤で様子をみていますが、M蛋白が大きく減少しました。先程、ステロイドと併用した方がよいとおっしゃいましたが、単剤のままでよいでしょうか?

村上先生:ステロイド剤を併用するのは、要するに、どうしても治療効果を上げたい場合の話です。単剤で効果があるのならそのままで様子をみられたらよいと思います。サリドマイドは不思議な薬で、ステロイドが効かなくなった方に併用しても効くことがあるし、反対にサリドマイドが効かなくなった方にステロイドを併用しても効くことがあります。結構使い勝手の良い薬です。


質問10
50代の患者です。今から15年前に発症しまして、M蛋白がここ10年ほど安定しています。インターフェロンを週3回とステロイドを飲んでいます。3年ほど前から、アミロイド沈着がひどくて、心臓の方に溜まってしまい、不整脈を起こしています。このような状態でもサリドマイドを試してみる価値はあるのでしょうか。

先生:アミロイドは非常に厄介です。骨髄腫の患者さんに合併するか否かで、予後が大きく変わります。M蛋白の一部がアミロイドという形に変わって、色々な臓器に沈着する病気がアミロイドーシスです。心臓に沈着する事が一番怖いです。不整脈による心停止を起こします。このアミロイドーシスの治療は昔から色々試みられていますが、なかなか良い治療法がありません。私は、おひとり、消化管アミロイドーシスで、腸が動かなくなったのですが、VAD療法をやって良くなった患者さんを経験しています。しかし、他の方々ではほとんど良くなりませんでした。
サリドマイドで効果があるのかどうかに関しては、データがありませんので何とも言えません。すみません。現在以上の沈着を止めることは出来るかも知れませんが、治すことは難しいと思います。


質問11:アミロイドーシスは骨髄腫の中でも特殊な人がなるのでしょうか?また、アミロイドとはどんな物質なのでしょうか。全く聞いたこともないので。

村上先生:長く病気を患っている方にアミロイドーシスになられることが多いのはもちろんです。M蛋白の型はκとλのふたつあるのですが、λ型の方が圧倒的に多いです。その理由は分かりません。旦那さんもおそらくλ型と思いますが、如何でしょうか。
昔、Virchowという先生が「澱粉様の物質」ということでアミロイドという名前をつけました。この物質が様々な臓器に沈着する病気がアミロイドーシスです。これを色々調べていくと骨髄腫に非常に多いことが分かりまして。骨髄腫は形質細胞が腫瘍化したもので、形質細胞は本来抗体を作ります。異常な形質細胞が増えて、この抗体がいっぱい出来る病気が骨髄腫で、出来た抗体をM蛋白と僕らは呼んでいるわけです。抗体というのは、皆さんがIgGとかIgAとか説明されているものです。その構造は4本の鎖からできています。2本の長い鎖と2本の短い鎖です。長い方をheavy chain、短い方をlight chainと呼んでいます。このlight chainがくっついたものがアミロイドという物質です。糊みたいな感じで、ベターっと組織に沈着しています。これが組織障害を起こすのです。何%くらいの確率か忘れましたが、結構な率で骨髄腫の方に合併します。

司会者:では次の話題、新しい治療法についてお願いします。


(スライド28) サリドマイドと似た骨髄腫の特徴を標的とした治療法の一覧をお示ししました。1のサリドマイド誘導体と2のプロテアソームインヒビターに関しては後で詳しくお話しします。3番目のNFκB阻害剤は、骨髄腫の増殖に欠かせない物質の働きを阻害します。現在臨床試験が進んでいます。4番目の三酸化砒素ですが、これはいわゆる砒素です。この薬は、急性前骨髄性白血病にも有効です。最初に報告された先生は、難治性骨髄腫11中7人で病気の進行が止まったと報告しています。すごい成績です。その作用機序は、骨髄腫細胞の自爆、アポトーシスを誘導したり、サイトカイン分泌を抑えるとか、骨髄ストローマ細胞をやっつけるとか色々報告されていますが、サリドマイド同様にいくつかの作用機序が合わさって効いているようです。5番目の2ME2という薬は、女性ホルモンの自然変化体です。この臨床試験はアメリカで第2相試験まで進んでいます。6番目のチロシンカイネース阻害剤もアメリカで第2相試験までいっています。



(スライド31) これから、サリドマイド誘導体CC-5013とプロテアソームインヒビターのPS-341についてお話しします。これらの資料は、昨年のアメリカ血液学会でDana-Faber Cancer Instituteのアンダーソン先生とリチャードソン先生が発表されたスライドを頂いたものです。英語ですみません。
サリドマイドの誘導体、CCー5013、一般名レビミッドと言うのですが、この第1相試験の方法が書いてあります。対象は再発・難治例です。一日最大投与量を決定することがこの治験の一番の目的でした。もちろん、効果もみています。
最大投与可能量は1日、25mgでした。25%以上M蛋白が減少した症例、私たちはMRと言うのですが、63%の方がMRを得ています。

(スライド33) そこで、第2相試験が行われました。1日15mgを2回飲む群と1日30mgを1回で飲む群の比較をしています。それぞれの投与法別の効果とさらにデキサメサゾン併用の効果も検討しています。全体で50%以上M蛋白が減った患者さんが22%、25%以上M蛋白が減った患者さんが54%も認められました。デキサメサゾンとの併用は、副作用の増強もなく安全に行われましたが、効果については未発表でした。副作用は、本日書いてこなかったのですが、ほとんどがサリドマイドより軽かったようです。しかし、サリドマイドとほぼ同様の構造をしており、また作用機序も同じですから、妊婦さんが飲めば、催奇形性、つまりサリドマイド児とおなじ副作用はでると思います。後でお話しするPS341とほぼ同じ時期に治験がすんでいるのに、こちらだけFDAが認可していないのは、この点が引っかかっているのではないかと思っています。

(スライド36) 次に皆様が注目されているプロテアソームインヒビターである開発番号PS-341についてお話しします。一般名はボルテゾミブ、商品名はベルケードといいます。
その作用機序をお示ししました。細胞は外からの刺激を受け取って、その情報を細胞質内に伝え、さらに核に伝えます。すると、核の中の遺伝子情報をもとに、その情報に従って様々な物質を作るようになります。これらの物質のお陰で、細胞は生存したり増殖したり出来るのです。この過程は、何段階かのステップを踏んでいまして、この過程のどこかが阻害されれば、細胞が傷害されることになります。プロテアソームインヒビターもこの過程のひとつを阻害し、骨髄腫細胞を傷害します。他の細胞も傷害すると思いますが、特に骨髄腫細胞を強く傷害するようです。

(スライド37) ベルケードの第2相試験の方法をあげました。202人の難治性骨髄腫患者さんを対象にしています。移植後再発例はもちろん、サリドマイド使用後の患者さんも半分くらい入っていました。試験の目標は、治療効果が第一で、その他安全性、QOL改善効果、臨床的有用性、薬物代謝の検討も行われました。

(スライド38) 投与方法は、ベルケードを体表面積あたり1.3mg静脈注射します。これを週2回、2週間打って、1週間休むという方法です。これをできれば8回やることになっています。
治療効果ですが、25%以上M蛋白が減った患者さんが35%もいました。生存期間と進行までの期間については、これほど病状の進んだ方を対象としたにも関わらず、18ヶ月の時点で半分以上の方が生存されています。本当に驚くべき成績でした。アメリカ血液学会でアンダーソン先生がこの成績を発表された時、大きな会場でしたが満員で、多くの先生方が感動して帰って行かれたと思います。

(スライド略)

(スライド41) ベルケードの副作用は不思議なことにサリドマイドと似たものが出ています。吐き気、下痢、便秘などの消化器症状、末梢神経障害、それに血小板減少、白血球減少、貧血などの血液毒性です。

ベルケードについてまとめますと、ベルケードは再発・難治例に対しても有効で、副作用も比較的軽く有用である。また、貧血の改善効果がよく、QOLの改善効果も高いとしています。私は、ベルケードが注射剤であることがひとつの利点と思います。サリドマイドやCC-5013は経口薬であるため、薬が医者の手を離れるため、管理が非常に難しい訳です。マスコミの取り上げられた様に、他の人にあげちゃったとか、違う病気に使ってしまうと大変ですよね。注射薬ならば、この心配ありません。

(スライド43) 最後に、今日の講演内容について協力してくださった先生方です。


司会者:今から質問をお受けします。


質問12
診断後すぐ化学療法を行いM蛋白が正常範囲になりました。その後、サリドマイドを1日25r飲んで様子をみています。主治医からは1日、2〜3リットルの水を飲むように言われています。腎機能を示す検査値はよくなっています。

村上先生
要するに病気が悪くなったからではなくて、維持療法としてサリドマイドを使ったのでしょうね。私は100mgや200mgの治療に関するデータは持っているのですが、25mgや50mgの治療効果に関してはデータが無いので自信がありません。腎機能がよくなっているようなので、効いていると判断しても良いと思いますが、水を負荷していることも腎機能改善の一因かもしれません。やはり、先生とよく相談されて、有効であるかどうか判断していただくことが必要と思います。また、どうしても少量で治療効果をあげたい場合は、ステロイドをのせてみることをご検討されてはいかがでしょうか。


質問13
サリドマイドと化学療法の併用の標準的な方法はありますか?

村上先生
世界でやられている治療は様々です。結構強い治療、つまりVAD療法などと併用している先生もいらっしゃいます。しかし、私が日本骨髄腫研究会の使用状況を調べた時のデータでは、MP療法に近い治療法、特にMP少量療法やエンドキサン少量療法などが多かったです。日本の先生は、少量で良い成績を出しています。私は、ステロイド併用しかしていませんので、何ともお答えできません。


質問14
70代の患者です。VAD療法を2回やりましてIgGは500まで下がり、その後維持療法としてMP療法を約5ヶ月しています。IgGは少しずつ上がってきて、今2000位になっています。MP療法にかけあわせて、サリドマイドを使ってはどうかと思うのですが、先生はどうお考えになられますか?

村上先生
おそらく、IgGが500に落ちたのは、VAD療法の効果と思います。VAD療法が効いた後の維持療法は結構難しいのです。MP療法をやりながらで、500から2000に上がっていることから、MP療法では維持は難しいと判断されます。5ヶ月ではそろそろ治療法の変更を考える時期と思います。MP療法にサリドマイドをのせるのは少し怖いので、サリドマイド単独か、サリドマイドとデキサメサゾンの併用療法を先生に提案されてはいかがでしょうか。70歳代ということでしたら、そういうふうに始められた方が副作用も少なくて良いと思います。


質問15
50代の患者です。放射線療法、多剤併用の化学療法を1クール受けましたが、M蛋白が減少せず
MP療法に切り替えました。現在は、復職できました。お尋ねしたいのは、サリドマイドの値段についてです。保険が利きませんので経済的な負担が大きいと思い気になります。

村上先生
私は、現時点では治療が効いてらっしゃるから、すぐにサリドマイドは必要ないと思います。骨髄腫は本当に不思議な病気で、有効率の高い多剤併用療法が効かなくても、MP療法が十分効く方がいらっしゃいます。ある患者さんに、最初にVAD療法をやって全然効かなくて、仕方なくMP療法をやったところ、非常に良くなりました。その時、「先生が言ったことは嘘だね。強い治療法すれば早く良くなると言ったのに全然良くならなくて、MP療法で良くなったじゃない。」と言われたこともあるくらいです。あなたは多分そういうタイプの方で、MP療法が有効なタイプだと思います。サリドマイドは、悪くなった時期に使い始めればいいと思います。それでサリドマイドの金額ですが、以前は堀之内さんが一生懸命やって下さっていて、1錠(100r)200円で買えました。現在、日本骨髄腫研究会で行っている臨床試験は、研究費で買っていますので研究期間中は患者さんの負担はありません。色々な会社が輸入代行してくれていますけど、大体1錠100mgで500円から700円ですね。


司会者
私もサリドマイドを1日1錠飲んでいますが、私の場合はRHC社を通してイギリスから輸入しています。大体1錠(100r)700円くらいです。1錠25mgや50mgのものもあるようですが、それは若干割高になるようです。
私が一番多く飲んでいた時は、1日400mg飲んでいまして、その頃はメキシコ製で1錠が200円でした。今1日400r(4錠)となると経済的に大変です。
ご存知かもしれませんが厚生労働省の方にサリドマイドを承認して欲しいということで患者の会では2回陳情をしているのですが、過去に薬害があった薬ですので作ると手を挙げてくれる製薬会社がなかなか出てきません。厚生労働省は効くのは分かったから製薬会社から申請があれば前向きに検討するというところまではいっているのですが、それから先はなかなか進まないというのが現状です。


質問16
患者は60代後半です。2年前BJ型と診断され、MP療法、いくつかの多剤併用療法を経てサリドマイド療法を受けています。サリドマイドを始めた頃は非常に調子がよかったのですが、1年経過した頃から手足のしびれ、手の振るえなど末梢神経障害が出始め、最近は麻痺のようなものもあります。サリドマイドの量は多いときで1日200r飲んでいましたが、今は2日に100r飲んでいます。今後サリドマイドを続けてよいものか思案しています。腎機能を示す検査値が上昇傾向以外は血液の状態は低空飛行ながらも安定しています。

村上先生
ちょっと気になるのが、クレアチニンが上がっていることです。ベンスジョーンズ型骨髄腫は、先程ご説明した抗体のライトチェーンという軽い方だけが出てくるタイプです。一方、IgG型やIgA型というのは、抗体がまるまる増えてくるタイプです。ベンスジョーンズ型の一番厄介な点は、おしっこの中に大量にこのライトチェーンを出すのです。これをベンスジョーンズ蛋白と言います。そのために腎障害が非常に強くでてくる方が多いのです。ですから、クレアチニンがもし上がっているということになると恐らくこのベンスジョーンズ蛋白量が増えているということになります。病気のコントロールが上手くいっていない可能性がありますので、もう1度先生と相談されて、尿蛋白の定量をしてもらうべきと思います。


質問16
尿蛋白は330r/dlです。

村上先生
そうするとですね、一番簡単な方法は尿蛋白の量を計ると同時に、その尿中のクレアチニンを計りまして比で表す。つまり、尿蛋白量を尿中クレアチニンで割るわけです。すると、1日尿量が予測できるのです。丸1日尿を貯めなくても、外来で計れます。この方法ですと、おしっこ中の蛋白がどのくらい増えているか、経過が見えます。これをやって、病状を掴むことが大事だと思います。
あと治療法の選択ですけども、もしサリドマイドだけでなかなか難しくなった場合は、先ほど言ったようにステロイドを併用されてはいかがでしょうか。少量でも効くと思います。ご年齢から考えて糖尿病などの合併症が心配ですので、ステロイドを少し併用されてはどうでしょう。デキサメサゾンで、4mgから1mgの間。心配なら1mgから始めてもいいと思います。それを加えてみてはいかがでしょうか。


質問17
60歳代の患者です。発病後15年になります。以前背中の痛みが強く、放射線治療を経験しています。最近別の場所ですが、また痛みがでてきました。再度、放射線治療は可能でしょうか。

村上先生
放射線照射がどのくらい可能かというご質問ですが、脊椎はすぐ後ろ側に脊髄が走っていて、脳からの神経の束が通っています。そのため、脊椎に照射しますとどうしても神経にかかってしまいます。ですから、照てる量に限界があり、最高で45グレイ位ですから、大体1回2グレイだから25回くらいかけると、もうそれ以上かけると神経がやられてしまいます。そのため、一度かけた同じ部位へかけるのはなかなか難しいと思います。照射した部分の脊髄がやられると、それから下が機能しなくなって動かなくなってしまいます。別の新しい所に痛みが出た場合は、照射も可能です。放射線をかける前にまずレントゲンで確認しますが、MRIをやることが一番大事で、もし怪しい場所があって、普通のレントゲンで見て分からない時は必ずMRIお願いした方が良いです。MRIの方が脊椎の病変はよく分かりますので。
もう次の追加の照射が出来ないとなると化学療法とかサリドマイドとか新たな治療法でやるべきです。放射線療法だけでは難しいと思います。


質問18
サリドマイドを2ヶ月前から100mgで始めましたが、副作用が減る方法はあるのでしょうか。水が良いとか、アガグリスが良いとか、免疫力をあげる薬を飲むと良いとかありますか?

村上先生
サリドマイドの副作用軽減の方法については、サリドマイドの代謝が大きく関係すると思います。しかし、サリドマイドの代謝に関してはよく分かっていないのです。一般的に考えられているのは、血液中で加水分解されて、比較的速やかにおしっこ中に代謝産物が出ると考えられています。一部分は肝臓で代謝されるとも言われています。群馬大学では、サリドマイドを使った患者さんの血中濃度を計ってみました。一定の時間でです。そうすると、患者さん毎で大きくバラつくことと、同じ患者さんでも日によって結構バラことがわかりました。その理由は分からないのですが、ただ、血中濃度が低い方も効くことは効きます。それで、この結果をまとめてアメリカに投稿して先方のレフリーと議論してみました。その結果、サリドマイドの代謝産物が治療効果と副作用に関与している可能性があるのではないかということになりました。
先程お水をいっぱい飲めばいいというのは、これらの代謝産物をどんどん、どんどん尿中に出してしまえということで、副作用軽減にはある程度役に立つ方法かもしれません。ただ、その水を飲むと副作用が軽減するか否かの細かいデータは、私は知りません。申し訳ないですが。また、他の副作用を減らす方法も思いつきません。


質問19
先程、アメリカや外国の色々な新しい薬の説明をうかがいましたが、日本で承認され保険適用になるには時間がかかるように思います。保険適用なしで使えるようになるのはいつ頃になりますでしょうか。

村上先生
臨床試験が進んでいるお薬を使えるかという、つまり認可される前に使えるかということですけれども、実際、使っている先生がいらっしゃることは知っています。しかし、これには大きな問題があります。例えば、今日本で臨床試験が始まるPS341ですが、これはヤンセンファーマという会社が臨床試験、フェーズ1を非常に厳格な基準にそって始めます。そして、会社も担当される先生方も出来るだけ素早く試験を終わらせて、有効性および安全性を出して、早く皆さんに使えるようにしたいと考えていると思います。このような厳格な臨床試験が進んでいる最中に、ポンっとどっかの先生が個人的に使って、そこで強い副作用が出た場合には大問題になるのです。このような場合、臨床試験がポシャることが、ポシャるというのは潰れちゃうということがある。これは事実らしいですね。ですから、もしこのような試験中の薬を使う場合は、患者さんも医者も大切な臨床試験に影響を与える可能性があることを認識して使っていただかねばなりません。私は使いたいですが、今控えています。輸入すれば使えますが、なるべく早く日本で一般の患者さんに広く保険適用されて安価に使えるような体制をつくるため控えています。

司会者
ベルケードについては患者の会でも7月に厚生労働省に申請を出しておりますが、ヤンセン社が今非常に小規模な治験をすると聞いています。その結果をヤンセン社がまとめて、厚生労働省に申請を出す時、また患者の会で要望書を提出してなるべく早く認可してもらうように陳情しようと考えています。治験が終わるのに1年くらいかかりますので、そこから承認が出るまで、残念ながら保険適用で使えるまでにはまだ数年かかるかもしれません。


質問20
患者は50代です。自家移植を2回して現在は復職しています。今、週3回インターフェロンを投与しているのですが、M蛋白が増加傾向です。受け持ちの先生は年齢から考えてまだ他人からの移植も含めて考えたらどうかとおっしゃっています。また、今後の治療法を主治医と相談するのですが、サリドマイドはこれから先のことなのでしょうけれども、先生のお考えを聞かせて頂きたいと思います。

村上先生
先ほどの個別相談の方も若い方でして、治療法に苦慮しますね。骨髄腫のスタンダードな治療法というのは、大体65歳、日本の場合は65歳が平均発症年齢なのですが、その年齢層の患者さんを中心に組んである治療法なのです。40代、50代の方、特に50代前半までの方はどう治療すべきか、まだはっきり結論は出てないと思います。群馬大学の場合は50歳前半までの方は、可能であれば治癒を目指す治療を勧めるようにしています。恐らくサリドマイドにしろ、今度出てくるベルケードしろ、治癒までにはなかなか持っていけないと思われます。そうなると移植ということになりますが、自家移植はやはり再発しますので、同種移植、つまり人から造血幹細胞をもらう移植を勧めるようにしています。
骨髄腫の場合には、全身状態、腎機能、肝機能、骨の状態などがありますのでかなり制限されますけども、状態が許す方で、ご本人とご家族のご希望がある場合には同種移植をお勧めします。同種移植には、先ほど清水先生がおっしゃったようなGVHDや早期死亡のリスクがあります。ただ早期死亡はもしかしたらミニ移植で乗り越えられるかもしれません。しかし、GVHDに関してはフルの移植、つまり昔ながらの移植のように出ると思います。注意しなければならない合併症でしょう。ドナー探しですが、まずご兄弟を調べて、駄目な場合は骨髄バンクで調べて頂く方が良いと思います。
極端な話、骨髄腫という病気はなかなか長生きできません。こんなに大勢の患者さんのいらっしゃる前で大変申し訳ないですが、一般的データからすると10年生存は非常に厳しいのが現実です。ですから、50歳の方が60歳まで生存すれば良いのか。普通は80歳まで生きられる。当然、あと30年生きられる方が良いですよね。この点から、若い患者さんの場合には、同種移植を考えてくださいと言います。65歳以上の方に移植はちょっと二の足を踏みます。危険を冒して治癒を望むことよりも、色々な治療を組み合わせて10年延ばすことができれば十分と、失礼ですが思います。これはあくまで私見です。


質問21
患者は60代前半です。4年前に診断を受け、約2年前からサリドマイドを飲んでいます。サリドマイド単独では効かないのでデキサメサゾンと併用していましたが、1年半くらい経った頃から状態が悪くなってきました。現在もサリドマイドとデキサメサゾンの併用を行っていますが、M蛋白も下がらず、本人もしんどがっています。主治医は打つ手がないとおっしゃいますが、このような状態でベルケードを試してみる価値はあるのでしょうか?

村上先生
アメリカの報告でも、日本で使った先生の報告でも、サリドマイドが効かなくなった患者さんにベルケードを使っています。これらのサリドマイド抵抗性の患者さんにもよく効いていました。副作用に関しては、先程ちょっと言いましたが、患者さん個人差がありますが、恐らく殆どの無理なく使っていました。やはりそういう患者さんの場合は、ベルケードは使えればすぐ使うべきと思います。


質問22
血栓症について教えていただきたいのですが。

村上先生
血栓症とはどういうものかと言うことですね。血栓とは、簡単に申しますと血管の中を普通はスムーズに血液が流れているのですが、その血液が何らかの理由で血管の中で固まってしまうことです。普通血栓といいますと、皆さん悪い印象をお持ちですが、本来は人間を守るシステムです。包丁を手で切ったときに血が止まるのは、切ったところに血栓が出来るお陰で血が止まるわけで、普通の場合は良い仕事をしているわけです。それが時々過剰気味になることが血栓症で、脳血栓、心筋梗塞も血栓症のひとつです。血栓が出来るには、血液が固まりやすくなる条件があります。それには大きくふたつの要因がありまして、血液側の原因と血管側の原因があります。例えば、動脈硬化等の場合は、殆ど血管側の原因です。
では、血栓症がサリドマイドでなぜ起こるかという理由ですが、その原因はまだ良くわかっていません。ただ恐らく血液側に何らか影響を与えて血が固まりやすい状況になるのではないでしょうか。


質問23
痴呆の症状が出ている患者さんに対してサリドマイドの使用例がありますか?
また、そのような患者にもサリドマイド治療は可能でしょうか?

村上先生
私は、患者さんに病名を告知して、さらにサリドマイド臨床試験に関してインフォームドコンセントを得てからサリドマイドを使っています。倫理委員会にもそういう形で通しています。ですから、これらのことを認識ができない方にはちょっと、使っていません。

司会者
時間をオーバーしていますので分科会3 サリドマイドと新しい治療法はこれで終わりにしたいと思います。長時間、真摯に対応して頂きました村上先生に拍手でお礼をしたいと思います。どうも有難うございました。