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6月25日から29日までギリシャのコス島で第11回国際骨髄腫ワークショップが
開催されました。この会議では骨髄腫に関する基礎および臨床の最新情報が一挙
に発表されますので、骨髄腫に関心を持つ者にとっては目が離せない重要な会議
です。連日40度を超える熱波に見舞われ、会場の冷房も効かないという厳しい
環境でしたが活発な討議が行われました。この中で特に造血幹細胞移植に関する
話題を紹介したいと思います。
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1.自家造血幹細胞移植
近年サリドマイド(T)やボルテゾミブ(B)、レナリドマイド(R)といった
新規薬剤が臨床に応用され、これらを組み合わせることによって未治療の患者
さんに対しては自家移植に匹敵するようなすばらしい成績が報告されています。
このような現状において、自家移植の位置づけはどのようになるのか、いつ実施
するのが適切であるのかといった新たな検討課題が出てきています。
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1)寛解導入
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移植適応のある患者さんでは本邦ではVAD療法により寛解導入が一般的で
すが、サリドマイド(T)+デキサメタゾン(D)がVADより奏効率で優る
ことが2005年にイタリアから報告されました。その後、同様の報告が相
次ぎ、サリドマイドを用いた寛解導入療法(TD, TAD)は従来のVADより
奏効率で優れていると考えられています。しかし、Tによる深部静脈血栓症
の合併症が指摘されています。そこで、もうひとつの新規薬剤である
ボルテゾミブ(B)を用いた寛解導入が検討されています。その結果、ボル
テゾミブ+デキサメタゾンの併用(B+D)では70〜90%と極めて高い奏効率
がえられ、引き続き自家移植を行うことでVGPR(M蛋白90%以上減少)+CR
(完全寛解)が55%にも達することが報告されました。実際、フランスの
IFMグループによるVADとBDとの比較試験の中間解析では、CR+VGPRはBD群で
は寛解導入終了時で47%、自家移植後では65%とVADより優れていることが
報告されています。今後はBDあるいはもうひとつの新規薬剤であるレナリ
ドマイド(R)+少量デキサメタゾンが標準的な寛解導入療法になると予想
されます。
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2)移植前処置
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自家移植前の前処置として、現在メルファラン(Mel)200 mg/m2が全身
照射を含むレジメンより副作用が少ないという理由で広く行われています。
Melの投与量を増やす試みも行われていましたが、ここでも新規薬剤との併用
が試みられています。Mel 200 mg/m2とベルケイドを併用した前処置が報告さ
れ、今後の展開が期待されます。
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3)維持療法
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これまで自家移植後の維持療法として確立されたものはありませんでした。
2006年にフランスからサリドマイドが維持療法として有用との報告がありま
した。サリドマイドにより無イベント生存の延長が報告されています。しか
し、詳細に解析するとこの効果は移植後CRに達した症例ではみられず、VGPR
に到達しなかった症例においてのみ観察されています。このことは、サリド
マイドは移植後の残存骨髄腫細胞に効いていることを示唆し、真の維持療法
としての効果ではないと考えられます。サリドマイドの維持療法については
オーストラリアからも同様の報告がありました。しかし、維持療法によって
生存期間が延長するとの結論は得られていません。サリドマイドによりVGPR
に到達すれば早期に中止すべきとの考えもあります。そこで、維持療法とし
てサリドマイド以外の新規薬剤の検討が行われています。
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4)シングル移植とタンデム移植
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タンデム移植(自家移植を3-4ヶ月の間に連続2回行う方法)により無
イベント生存は延長しますが、生存期間の延長については結論が得られてい
ません。初回移植後の再発時に2回目の移植を行うことにより一部の患者さん
は救済されると考えられるからです。今後、2回目移植の実施時期について
さらに検討が必要になると思われます。なお、タンデム移植の有用性は、初回
移植でVGPR以下の効果しか得られなかった症例においてのみみられます。
したがって、初回移植でCRが得られれば2回目移植は必要ないと考えられます。
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5)高齢者の自家移植
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65歳以上の高齢者では移植の適応はありません。フランスからのMP(Mel+プレドニン)
とMP+T(MPT)、Mel 100 mg/m2による自家移植の比較試験では無進行生存、
全生存ともにMPTが最もすぐれ、MPTが世界的に標準治療と認識されています。
しかし、MPTは深部静脈血栓症発症の危険性があります。今後はMPTと、MP+B、
MP+Rの効果が検討されていくことになります。
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2.同種移植
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1)ミニ移植
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骨髄腫における同種移植では治療関連死亡が多く、通常の前処置による移植
(フル移植)は若年者にしか適応がありません。現在、検討されているのは移植
前処置を軽減した骨髄非破壊的前処置による移植(ミニ移植)です。このタイプ
の移植は移植後のQOL(生活の質)が悪いとして、現在、米国ではほとんど行われ
なくなりました。しかし、欧州ではいまも自家移植に続いてミニ移植を行う
タンデム自家/ミニ移植の検討が行われています。
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2)タンデム自家移植とタンデム自家/ミニ移植
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これまでタンデム自家移植とタンデム自家/ミニ移植の比較試験ではタンデム
自家移植が優るという報告(フランス)とタンデム自家/ミニ移植が優る(イタリア)
という2つの相反する結果が報告されています。今回のワークショップでもこの点
についての議論が行われました。フランスからの報告はハイリスクの患者さんを対象
としていること以外に、ミニ移植の前処置がFLU/BU/ATG(フルダラビン/ブスルファン/抗ヒト胸腺細胞抗体)
であり最悪の前処置であること、一方、自家移植は最高の前処置で行われていること
から両群間の有意差が出なかったのではないかとの指摘がありました。
タンデム自家移植とタンデム自家/ミニ移植の優劣については他の試験も継続中ですが、
ドイツやオランダ、EBMT(欧州骨髄移植登録)の報告では有意な差はみられていません。
結論を出すにはいましばらくかかりそうです。
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3.今後の展望
これまで、自家造血幹細胞移植は65歳未満の若年者に対する標準治療として広く
行われてきました。今後もMMに対する重要な治療法として実施されるでしょう。しかし、
新規薬剤の登場でその位置づけは大きく代わる可能性がありますし、またその成績も改善される
と思われます。一方、ミニ移植は米国ではほとんど行われなくなりましたが、治癒を目指すとい
う点では重要な治療法と思われます。新規薬剤と移植療法をうまく組み合わせることにより予後
が大きく改善されることは間違いないと思われます。
追記:本文中に出てきた新規薬剤については現在、本邦ではベルケイドのみ承認(再発・
難治例が対象)されています。
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