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最近の治療研究の進歩により,多発性骨髄腫の治療戦略は従来の抗がん剤を中心とした治療から,
サリドマイドやボルテゾミブ,レナリドマイドなどの新規治療薬を用いた治療へと大きく変貌を遂げつつあ
ります。とくに,ボルテゾミブ(ベルケイド)については,2002年に再発・難治例に対する有効性が報告さ
れて以来,世界中で精力的に臨床研究が進められてきました。今回の国際骨髄腫ワークショップは
ヒポクラテス生誕の地であるギリシア・コス島で開催されましたが(図),ボルテゾミブに関する知見が
蓄積されてきた時期でもあり,その治療成績に多くの関心が寄せられていました。
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図. コス島中心部にあるヒポクラテスの木
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1. 再発・難治例におけるサルベージ療法
ボルテゾミブはデキサメサゾンとの比較試験(第III相臨床試験)で明らかにされたように,
単剤でも約30-40%の奏効率を示し,生存期間においても延長効果が示された薬剤です。その後は
デキサメサゾンをはじめ,メルファランやサイクロフォスファマイド,ドキソルビシンなどとの併用療法が
試みられています。これらの併用療法は60-80%の奏効率を発揮し,完全寛解 complete response
に至る例も10-30%に上ることが示されました。Orlowskiらはボルテゾミブとpegylated liposomal doxorubicin
との併用療法について検討し,ボルテゾミブ単独と比較し奏効期間が有意に延長したことを報告しました。
今後,ボルテゾミブと抗がん剤との併用療法がサルベージ療法の中心的な役割を果たすものと思われます。
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2. 未治療例における新規治療
65歳以下の例においては,ビンクリスチン,アドリアマイシン,デキサメサゾン(VAD)療法で寛解導入
を行った後に自家末梢血幹細胞移植を行うことが標準治療とされていましたが,ボルテゾミブの登場により,
この薬剤を初回治療から使用する治療戦略が検討されています。フランスのHarousseauらのグループは,
最初にボルテゾミブ+デキサメサゾン療法を行い,次に自家末梢血幹細胞移植を行う臨床試験に取り組んでいます。
これまでの治療成績として,ボルテゾミブ+デキサメサゾン療法での奏効率が約70%,自家移植を終えた時点
での奏効率が約90%に達していることが報告されました。なお,ボルテゾミブ+デキサメサゾン療法により完全寛解が
得られる場合もあり,そのような例では自家移植の必要性があるか否かが議論されていました。
一方,65歳以上の例においては自家移植を安全に施行することが困難であることから,メルファラン+プレドニドロン(MP)
療法が標準治療として行われてきましたが,スペインのSan Miguelらは,そのような比較的高齢者に対する
MP療法にボルテゾミブの併用(MPV)を試みました。MPV療法は従来のMP療法の成績と比較し,奏効率(90%対42%)
および26か月生存率(85%対49%)において有意に優れていたことが報告されました。また,MPV療法により約30%の
完全寛解が得られており,これはMP+サリドマイド療法の完全寛解率よりも高いことが示されました。
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3. 骨病変に対する効果
骨病変は骨髄腫における最も重要な合併症ですが,ボルテゾミブは骨病変に対しても効果
を有することが知られてきました。Terposらは実際にボルテゾミブ治療を受けた患者の骨代謝
マーカーを解析し,ボルテゾミブには骨芽細胞の活性化および破骨細胞の抑制の2つの効果が
あることを報告しました。また,このような骨に対する作用は他の新規治療薬には見られない特徴
であることが示されました(表)。
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4. 副作用対策
新規治療薬においても様々な副作用の出現が問題となっています。とくに,サリドマイドや
レナリドマイドでは深部静脈血栓症という重篤な副作用が多いことが知られていますが,
ボルテゾミブにはこのような副作用なく,むしろ他の薬剤による血栓症の発症を抑制する効果が
あることが報告されました。一方,ボルテゾミブには末梢神経障害の副作用が知られていますが,
障害の程度に応じて減量や休薬を行うことが重要で,それにより回復する例が多いことが報告
されました。また,血小板減少はボルテゾミブ治療の約30%に見られる頻度の高い副作用ですが,
一過性で休薬により早期に回復することが示されました。なお,レナリドミドでは血小板減少よりも
白血球減少の副作用が問題となることから,適切なG-CSFの使用が推奨されました。新規治療薬
どおしの併用療法や抗がん剤との併用療法を行う際には,これらの副作用の特徴にも注意することが
重要であると結論されました(表)。
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これらの報告を総合的に考えますと,ボルテゾミブは今後の骨髄腫治療における最も重要な薬剤
となりつつあります。現在も多くのボルテゾミブ併用療法についての臨床試験が進行中で,有効性や
安全性の観点からより優れた治療法が確立されるものと期待されます。しかしながら,ボルテゾミブに
反応しない例や,ボルテゾミブ奏効後の再発例も知られており,その克服が今後の課題として残され
ています。
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