国際骨髄腫会議だより本年(2003) 5月24〜27日に、スペイン、サラマンカにおいて第9回国際骨髄腫会議 (International Workshop on Multiple Myeloma)が開催されました。 サラマンカはマドリッドから西北へ、バスで2時間ほどかかる古い町で、町全体が 世界遺産に指定されています。サラマンカ大学は、世界で最も古い大学で、サラ マンカ大学のSanMiguel教授が今回の主催者でした。この会議は、2年に一回開 かれており、前回はカナダのバンフでした。 会議の期間中、世界中から集まった骨髄腫の研究者が様々な話題を発表、朝8時 から夜6時まで討議します。 テーマは、 1:良性M蛋白血症から骨髄腫に進展しやすい因子は何か 2:PBSCTは本当に予後を改善したか 3:PBSCTは1回がいいのか2回がいいのか 4:ミニ移植の現状は などに加え、基礎研究についても多数に及びました。 なかでも、世界中の症例を1万例近く解析し、世界に通用する予後因子を新たに同 定する試みについての発表は、日本の症例も約1000例含まれており、興味深い ものでした。 PBSCTについては、この治療が始められてから10年がすぎ、各国から長期解析結果 が発表されはじめました。米国、イタリア、フランスからは、MP療法を中心とする化 学療法に比べ、PBSCTは予後を改善することが報告されましたが、スペインのグルー プは、長期予後は改善しなかったとしています。 PBSCTを1回ですますかどうかについては、1回目によく効いた人には2回しても差 がないとの報告がありました。まだ、画一的な結論は導き出されないようです。 ミニ移植は、多くの症例で実施されつつありますが、経過観察期間がまだ短く、現時 点での結論としては治療関連死が少ないこと、すなわち従来の同種移植にくらべ安全 性が高いことは確定的です。しかし、長期予後を改善するかどうかは、もう数年待つ 必要があります。 サリドマイドの発表は、前回よりも少なくなりました。これは、サリドマイドが骨髄 腫に有効であることがあたりまえのことになったせいであると思われます。クラリス ロマイシンとサリドマイドの併用が、サリドマイド単独に比べ有効であるとの報告が 散見されました。我々も同様の経験があり、クラリスロマイシンの作用を見直すべき であると感じました。 新しいプロテアソームインヒビターであるVelcade(PS-341)の報告もありましたが、 すでに第3相治験が開始されることもあり、報告数は少ないようでした。第2相治験 の結果は、ホームページ上でご覧ください。 (URL http://216.122.248.115/myeloma/article.jsp?type=detail&articleId=767) 日本からは、山口大学(骨髄腫細胞の多様性)、徳島大学(HLAに対する抗体療法の研 究)、名古屋市立大学(染色体異常と骨髄腫の進展)、我々熊本大学(プロテアソーム インヒビターの作用機序の研究)がありました。 我々医師にとって、この会議は2年間の進歩が濃縮されて勉強できる良い機会であり、 世界の標準を身を持って体験できます。今後も、常に世界標準を目指していきたいと 思います。 畑 裕之 熊本大学医学部附属病院血液内科 |