2007年 1月24日
報道関係各位
日本骨髄腫患者の会

多発性骨髄腫治療薬サリドマイド、ボルテゾミブ(ベルケイド®)に関する要望書を厚生労働省に提出


日本骨髄腫患者の会は、本日、厚生労働大臣、厚生労働省医政局長、厚生労働省医薬食品局長、保険局長宛てに、別紙のとおり要望書を提出しました。

1. 要望書の趣旨

 サリドマイドは、希少疾病用医薬品に指定されながら未だ承認を得られず、延命を期待できる患者がその恩恵を受けることができません。緊急避難的措置である個人輸入に頼って久しいこの現状が一日も早く改善されるべく、早期承認を求めました。同時に安全管理システムが承認の足枷となることが無いよう、迅速且つ的確な取り組みを要望しました。
 ボルテゾミブは、昨秋承認を得ていますが、診断群分類包括評価(DPC)によって治療機会を失うことがないよう、環境整備を求めました。

2. サリドマイドについて

 サリドマイドは、多発性骨髄腫の治療薬として既に米国、トルコ、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、タイ、韓国で承認を得ており、サリドマイド及びサリドマイドを含む併薬療法は米国では既に標準的な治療方法となりつつあります。日本では藤本製薬株式会社によって治験が終了し、昨年8月8日に承認申請が出され、現在当局により審査中です。
 サリドマイドの治療抵抗性多発性骨髄腫における治療効果は、サリドマイド単剤でおよそ35%、ステロイドホルモン剤デキサメサゾンとの併用でおよそ50%の患者に有効性が認められます。サリドマイドは、経口薬であることから患者のQOLに大きく貢献する薬剤であり、他の化学療法剤との併用により更に高い効果が報告されています。
 治癒に至る多発性骨髄腫の治療方法はまだ確立されていません。そしてどの薬も、治療方法も、いずれは効かなくなります。こういう厳しい現実と共に生きている骨髄腫患者にとって、治療方法が一つ増えることはその分、生きられる時間が増えることを意味します。すなわち、骨髄腫患者にとってサリドマイドを他の薬で代替するという選択肢はない、ということです。

3. ボルテゾミブ(ベルケイド®)について

 ボルテゾミブは、世界70カ国以上で多発性骨髄腫の治療薬として承認を得ている、プロテアソーム酵素複合体をターゲットとした新しいタイプの抗がん剤で、日本では2006年10月に承認、12月1日市販が開始され、安全性が十分確保されている施設において治療が開始されています。
 ボルテゾミブは、欧米において行われた第二相試験で、治療効果が認められたため、米FDAは迅速承認プログラムの下、申請後わずか4ヶ月で承認しました。EUでも2004年4月承認されています。その後の第三相試験では、多発性骨髄腫の2次治療において、ステロイドホルモン剤デキサメサゾン治療群に比べボルテゾミブ治療群では死亡者数が55%少ないことが示唆され、ボルテゾミブの優れた延命効果が証明されています。 

4.サリドマイドの『教育と安全使用に関する管理システム』について

 多発性骨髄腫患者の従来の治療法による診断からの生存期間は平均して3年半で、多くは抗がん剤治療に抵抗性になり死亡します。治療抵抗性になった段階でサリドマイド治療を受けることができたなら、そこから数年間生きる可能性が生まれます。今闘病中の患者の大きな叫び声は「私たちには時間がない」で、今こうして薬の承認を待っている間に、骨髄腫患者の命が絶たれています。
 また、多発性骨髄腫の初診時の年齢階層は別表のとおり年齢中央値66歳です(表1)。この年齢層の女性患者のほとんどは閉経しています。多発性骨髄腫の特徴的な症状である骨の病変が数箇所におよび(表2)、起き上がることすらままならない患者も多く、このような骨髄腫患者が妊娠する、させる可能性は現実的には低いと考えられます。
 そうであっても、サリドマイドを服用するための教育や薬の管理のしくみがなおざりでよいとも、不要だとも骨髄腫患者は考えていません。若年層の患者もいます。患者には家族もいます。サリドマイド禍が再び起これば、取り返しのつかないことになることを、命の大切さを、身をもって知っている私たち骨髄腫患者は重々承知しているからです。
 このような年齢層の骨髄腫患者が40年前に起こったサリドマイド禍を知らないわけはありません。被害を受けた方々と同年代の患者はこう言いました、

『私(1956年生)は被害者の方々とほぼ同世代です。私は骨髄腫発症まで五体満足で好き勝手な人生を歩んできました。それに比して被害者の方々は防げる事も可能だった薬害で誕生時から障害をもち、あと平均30年も生きていかなければいけないのです。これは並大抵の事ではないと思います。この被害者の方々に向かって「骨髄腫患者は命がかかっている」的な事を言い出したら話はかみ合わなくなる一方です。』

このように、不治の病を抱えながらも骨髄腫患者の多くはサリドマイドによって被害を受けた方々に思いを馳せ、安全管理システムの重要性を承知しています。

 一方で、安全管理システム構築のために必要以上の時間をかけたり、非現実的なシステムを作ったりすることに抵抗を感じます。2005年末に新聞報道があった関東の県立がんセンターでの管理不備が事あるごとに取り沙汰され、「医師に任せていたのでは十分な管理ができるはずがない」との論調があります。確かに、管理が不十分な事実があったのでしょうが、それを全てとして骨髄腫患者の現実を無視したシステムでは実効性が伴わないと危惧します。

 今サリドマイドを必要としている『多発性骨髄腫』がどういう病気であるのかを知った上で、必要十分な『教育と安全使用に関する管理システム』を一日も早く完成するよう厚生労働省がリーダーシップをとり関係機関が協力すること、そして、完成したシステムをサリドマイドに関わる全ての人が遵守すること、これらが現在闘病中の多発性骨髄腫患者とサリドマイドによって被害を受けた方々すべての福祉に適うことではないでしょうか。

表1 表2
(表1,2共 多発性骨髄腫の診療指針第1版より)

参 考

多発性骨髄腫について

多発性骨髄腫は:造血器腫瘍(血液がん)のひとつ。
発症率:人口10万人あたり約2人、現在日本国内に13,000人程度の患者を有するとされている。
患者の年齢層:40歳未満の発症は非常に稀で、診断時年齢の中央値は男性65歳、女性67歳との統計がある。
死亡率:1970年の人口10万人あたりの死亡率は0.5人であったが、2004年には10万人比2.96人となり、3,779人の命がこの病気によって失われている。
症状:特徴的な症状は、骨痛。腰部、背部、胸部、四肢などの痛みを訴え、脊椎の圧迫骨折で身長が十数センチ縮む例、神経を圧迫して下半身不随となる例は稀ではない。疼痛緩和に麻薬系痛み止めが必要な患者も多い。そのほか、貧血、腎機能障害、易感染性などが代表的な症状。
治療法:抗がん剤治療、造血幹細胞移植など10数年前と比較し格段に整備されたといえ、未だ不治の病であることに変わりない。抗がん剤に抵抗性となれば治療の手段が失われ、診断後、平均3.5年で死亡する。

  

日本骨髄腫患者の会について

 日本骨髄腫患者の会(代表 堀之内みどり)は、米国ロサンゼルスに本部をおく国際骨髄腫財団の日本支部。1997年10月に東京都に事務局をおき、活動をスタートした。会員数は現在約1,000名。運営はボランティアの手で行われており、活動の費用は全て寄付金によってまかなわれている。活動内容は、患者やその家族への治療情報提供(セミナーの開催、ホームページによる海外文献の紹介、セカンドオピニオン手配、メールなどによる相談受付、ガイドブックの作成・無料配布)、研究助成金の授与、患者やその家族同士の交流の場の提供(メーリングリストの運営、地方ブロック会開催)など、多発性骨髄腫患者が前向きに闘病生活を送ることができるようさまざまな活動を行っている。また、治療情報の提供には日本骨髄腫研究会の医師を中心とした60名以上からなる顧問医師団の支援を受けている。http://www.myeloma.gr.jp/

以上

本件問合せ先:日本骨髄腫患者の会
担当 上甲 恭子

  

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