1. 多発性骨髄腫とは:
1) 多発性骨髄腫は血液の悪性腫瘍(がん)の一つで、骨髄中でがん化した形質細胞=骨髄腫細胞が増える病気です。30代後半から高齢者までの広い年齢相で発症しますが、特に60〜80歳代の人に多い病気です。この病気は全身にある骨の骨髄でおこり、主な症状は、病的骨折、骨のひどい痛み、貧血、高カルシウム血症、腎機能障害、感染症、骨髄腫細胞が産むモノクローナル蛋白などによる過粘稠度症候群などです。骨髄腫には残念ながら、現時点では完全治癒が期待できる治療法は見つかっていません。病気の進行や命に関わる症状を抑え、生活の質(QOL)を著しく低下させる症状の解消を主な目的に治療は行われます。治療の中心は抗がん剤とステロイドホルモン剤を組み合わせた化学療法で、最近は自己造血幹細胞移植を併用した超大量化学療法で病状の安定した期間の延長が認められるとの報告がありますが、適応となる患者は一部です。 また、ほとんどの例で再発し、次第に化学療法に抵抗性となることからサリドマイドやベルケードで代表されるような化学療法とは作用機序の異なった新しい治療法の早期導入が必需となっています。
2) 米国での推定患者数は4万5千人で、毎年1万5千人が新規診断されています。
5年以上の生存率は30%と報告されています。平均余命は3〜4年と言われていますが中には20年以上も生存する患者もおり、個人差の大きな病気でもあります。日本では日本では近年、人口の高齢化に伴い患者数は増加しており、2002年発行の「改訂版多発性骨髄腫」(甲府病院院長戸川敦著)によれば、患者はおおよそ1万いるものと推定され、毎年3000人以上の方が亡くなっています。高齢者の骨髄腫による死亡率上昇が推測されることから、今後日本の人口の高齢化が進むようなら、骨髄腫による死亡数は更に増加すると考えられます。
2. 日本骨髄腫患者の会:
1) 日本骨髄腫患者の会は、1990年に米国で設立された国際骨髄腫財団(IMF)の日本支部として、1997年10月15日に設立されました。
2) 患者の会を通して、骨髄腫に対する正しい知識を深めるなど情報を共有し、明るい療養生活を送れるよう会員相互の親睦を図ると共に、骨髄種の原因究明と治療法の確立ならびに社会的対策の促進を目的としています。そして患者が正しい情報を得、医師と相談しながら自分自身の治療を決める事が出来る様にとの思いも込められています。患者自身が自分の治療方針を決める権利は守られるべきと考えています。
3) 現在会員は約600名、メーリングリストによるメール及びファックスによる情報交換、情報提供、年1回の総会、さらに骨髄腫の研究して頂いている研究者への堀之内朗賞という形で研究資金の提供を毎年行っています。又、骨髄腫治療に携わっている医師約50名に顧問医師となって頂いており、患者の会をサポートして頂いています。
4) 患者の会は、患者、患者の家族及び遺族、サポーターのボランティアにより、運営されており、運営資金は患者の会の会員、サポーターの皆様方の寄付で全て賄われています。
3. 骨髄腫に対するサリドマイドの有効性:
1) 1998年に米国アーカンソー病院で骨髄腫に対するサリドマイドによる治療が初めて行われて以降、サリドマイドの臨床試験が多数行われ、骨髄腫患者の30%以上に有効であるとの報告がされています。
2) サリドマイドはUSAで1998/10月に、EUで2001/12月に、豪州で2002/3月に多発性骨髄腫のオーファンドラッグとして指定を受けており、FDA等の承認に向けて臨床試験が進められています。
3) 米国、欧州、オーストラリア、イスラエルなど多くの国で、既にサリドマイドは多発性骨髄腫の治療薬として広く使われています。
4) サリドマイドとステロイドとを併用した治療で60%以上の奏効率が、また更にクラリスロマイシンを加えた治療では90%近い奏効率も報告されています。
5) 最近、骨髄腫治療では中心的役割を果している米国アーカンソー病院やメイヨー・クリニックでは自家末梢血幹細胞移植の準備段階として、サリドマイドとステロイドとの併用療法を骨髄腫の診断を受けたばかりの患者から初期治療としても使っています。末期の患者を対象に臨床試験が始まったサリドマイドの治療が、今や初期治療を含め骨髄腫全般の治療薬として欠くことの出来ないものになってきています。
6) 日本では慶応大学病院血液、感染、リウマチ内科の服部豊医師が日本内科学会誌第91巻/平成14年9月20発行の臨時増刊号で慶応大学病院での造血幹細胞移植後再発例、及び、化学療法抵抗例の骨髄腫患者を対象としたサリドマイドによる治療結果を報告しています。
その報告では、22例中10例(45%)で腫瘍細胞の30%以上の減少を認め、有効であったと報告されています。副作用では、傾眠(79%)、便秘(54%)、手指のしびれ(54%)、皮疹(38%)、口渇(29%)、頭痛(25%)を認めたがいずれも軽度であり、投与継続可能であったと報告されています。
7) 骨髄腫患者の会でも、耐薬性が出来、抗がん剤の効力がなくなった、多くの会員からサリドマイドで腫瘍細胞が減少し、病状が著しく改善したとの報告が寄られています。従来の抗がん剤が効かなくなった骨髄腫患者にとって、サリドマイドは「命の薬」となっています。
4. サリドマイドの早期承認と同時に流通システムの確立を:
1) サリドマイドは未承認薬の為、サリドマイドの治療を受けられる病院は極限られており、多発性骨髄腫患者がサリドマイドの治療を希望しても多くの場合、治療を受けられない状態にあります。一人でも多くの患者がサリドマイドを使った治療の恩恵に与れるよう早期承認と保険適応を実現して頂きたいと願います。
2) サリドマイドは医師の個人輸入により日本に輸入されていますが、未承認薬であるために、その実態は十分に把握されていません。またサリドマイドの品質にもばらつきがあり、中には不純物が多いものもあります。薬害や副作用を防止し、患者に良質なサリドマイドを安定供給するためにも早期承認し薬事法の下での管理が必要と考えます。
3) 米国のセルジーン社のSTEPSはサリドマイドの効果を生かし、副作用を防止する為にも成果を上げた流通管理システムであり、過去に悲惨な薬害を起こした薬であることを考えると、日本でも同様のシステムが望まれます。
4) サリドマイドは経口服用薬であり、患者は自宅での服用が可能です。一般に入院の必要な他の抗がん剤治療と比べ、患者のQOLにとっては大きなメリットがあります。また、今やサリドマイドは末期の患者だけでなく、初期治療も含め骨髄腫全般の治療薬として欠くことのできない薬となっています。患者のQOLが低下したり、サリドマイドの適応範囲が狭くならないよう、十分に患者に配慮した形での管理システムの導入を要望します。
5. ベルケード〔Velcade別名(Bortezomib)〕の早期承認の必要性:
1) 米国FDAにより、2003年5月13日に新薬ベルケードが、多発性骨髄腫の患者を対象に、申請からわずか4ヶ月で認可されました。これは米国の迅速承認プログラム(The
accelerated approval program)【実質的なエビデンス以前に有望な効果に基いて承認を許可する事により、生死に関わる疾病に効果が期待できる薬剤を開発の初期段階から使用可能にするもの】の下に今までで最も速く承認されたものです。
2) FDAによる再発性、難治性多発性骨髄腫の患者の臨床結果は、「評価可能であった患者188人の内、27.7%に効果があり、副作用は一般に予測でき、対処出来るものであった」と発表されています。2003年5月のASCO(American
Society of Clinical Oncology)会議では、ベルケードとサリドマイドに関して、多数の臨床結果が発表されており、単剤での有効性と併せてベルケード又はサリドマイドと化学療法との併用で高い治療効果をあげているとの多くの発表がありました。
3) 2003年6月26日に発表された第二相臨床試験の最終報告では193人の内、35%に効果があり、19人が完全寛解になり、うち7人の患者では正確な免疫固定法でも骨髄腫細胞が検出されなくなったと報告しています。
4) ベルケードはサリドマイドで効果が得られない患者や複数の治療に対して抵抗性の患者に対しても有効例が確認されており、他に治療の選択肢がなくなった患者にとっては最後の希望となっています。今後、様々なベルケードとの併用療法が試されることにより骨髄腫の治療を根本から変える可能性があります。
FDA同様に短期間でベルケードが日本でも承認され、ベルケードによる治療が日本でも受けられるようになれば、多くの患者の命が救われ、新しい治療の可能性が広がると思います。
6. サリドマイドとベルケードへの保険薬適用を:
1) 骨髄腫患者は数年、幸運な場合には10年以上の闘病生活を余儀なくされます。この間、身体的、精神的負担に加え経済的負担にも耐えなければならず、患者は大変厳しい状況におかれています。
2) 近年、医学の進歩でサリドマイド、ベルケード等、多発性骨髄腫治療の新薬も登場し、患者の余命が延びる事が期待されますが、高額な薬代が患者にとって大きな問題となっています。
3) サリドマイドの場合、1錠100mgの価格が約1000円、日本では200mg〜400mg/日の服用から始めるのが通常なので、1ヶ月の薬代は6万円〜12万円になります。ベルケードの場合、週2回注射で、2週間で4回の注射が1クールとなっており、4回の注射にかかる費用は約70万円になります。この金額は、患者には大変な負担であり、経済的負担に耐えられず、治療が受けられない患者が沢山います。保険適用薬になっていないため、高額医療費控除の対象にもなりません。
4) 患者の経済的負担を少しでも軽くし、経済的理由で命を落とす患者を救う為に、サリドマイドとベルケードの保険薬適用を要望します。